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過活動膀胱(OAB)とは?突然の尿意に悩む方のための診断と治療ガイドの基本から応用まで

過活動膀胱(OAB)とは何か

突然の強い尿意に襲われ、トイレまで我慢できない。

夜中に何度も目が覚めてトイレに行く。こうした症状に悩まされている方は、決して少なくありません。過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)は、「尿意切迫感」を必須症状とし、通常は頻尿や夜間頻尿を伴う症状症候群です。尿意切迫感とは、「突然起こる我慢できないような強い尿意であり、通常の尿意との相違の説明が困難なもの」と定義されています。

40歳以上の日本人の有症状率は約12.4~13.6%と非常に頻度が高く、加齢とともにその頻度は増加します。つまり、10人に1人以上が過活動膀胱の症状を抱えているのです。場合によっては切迫性尿失禁(急に強い尿意が起こってトイレまで間に合わずに尿がもれる)を伴うこともあり、患者さんのQOL(生活の質)を大きく阻害する困窮度の高い下部尿路症状といえます。

過活動膀胱の原因と病態

神経疾患による過活動膀胱

過活動膀胱の病因は様々です。

脳血管障害、パーキンソン病、多系統萎縮症、認知症などの脳の神経疾患が原因となることがあります。また、脊髄損傷、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、脊髄腫瘍、頸椎症、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症などの脊髄の神経疾患も過活動膀胱の原因となります。これらの神経疾患では、膀胱をコントロールする神経系統に障害が生じることで、尿意を抑えるスイッチが効きにくくなり、膀胱が過敏になって症状が出やすくなります。

その他の原因

神経疾患がなくても、過活動膀胱は発症します。前立腺肥大症に合併することもあり、加齢による膀胱機能の変化も原因となります。さらに明らかな原因疾患のない「特発性」の場合も少なくありません。生活習慣や日頃のストレスからも影響を受けるため、さまざまな視点から治療に取り組むことが必要です。

過活動膀胱の診療の際には、下部尿路症状を引き起こす可能性のある薬剤の服用歴も聴取する必要があります。また、膀胱炎、膀胱結石、膀胱がん、前立腺がん、子宮がん、直腸がんなどの悪性腫瘍や局所的な疾患を除外することも重要です。

過活動膀胱の診断方法

症状による診断

過活動膀胱は患者さんの症状に基づいて診断されます。

自覚症状の評価が最も重要で、尿意切迫感の症状があれば過活動膀胱と診断されますが、頻尿や切迫性尿失禁を伴っていればより確実です。専門医は、過活動膀胱の診断や重症度を評価するために「過活動膀胱症状質問票(OABSS)」を用いますが、この質問票は患者さん自身が記入するものですので、自己診断にも使うことができます。

過活動膀胱症状質問票(OABSS)

質問3(尿意切迫感に関する質問)の点数が2点以上で、全質問の総合点数が3点以上であれば過活動膀胱と診断されます。また総合点数が5点以下であれば軽症、6~11点であれば中等症、12点以上であれば重症と、重症度判定に用いる場合もあります。

基本評価と検査

尿検査や超音波検査などの検査によって、膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍などの膀胱の特殊な病気の存在がないかをチェックすることは重要です。また、過活動膀胱患者の基本評価として、男性の場合は前立腺の大きさや形状の評価、残尿測定は推奨されます。女性過活動膀胱患者の基本評価としては尿検査と超音波検査での膀胱の形状や残尿量の評価ですが、膀胱瘤や骨盤臓器脱を疑う場合は、台上診(内診)も推奨されます。また、排尿日誌は過活動膀胱患者の基本評価として推奨される重要なツールです。

排尿日誌では、時間・量・水分・漏れの有無を記録するだけで原因の手がかりになります。数日間の記録をつけることで、日中および夜間に膀胱の最大容量を把握でき、治療計画の立案にも役立ちます。過活動膀胱の診療において、QOL評価も推奨されており、治療目標の共有も重要です。

過活動膀胱の治療法

行動療法

過活動膀胱に対する治療は、行動療法と薬物療法が中心となっています。

行動療法には、ダイエットや運動療法、飲水指導などの生活指導や排尿記録に基づいて排尿を我慢させることで過活動膀胱を改善させる膀胱訓練、骨盤底筋訓練などの理学療法が挙げられます。効果面だけでなく、安全性も高く、有用な治療法であると考えられています。生活習慣の改善は、過活動膀胱の治療として推奨されており、過活動膀胱に対する行動療法と薬物療法を併用することも推奨されます。

膀胱訓練は、尿をなるべく我慢させる訓練法であり、無治療に対する優越性や、無作為試験において抗コリン薬とほぼ同等の効果が報告されています。悪影響は無く、安全性も高い療法です。骨盤底筋トレーニングは、目安として一日4〜5回程度、姿勢を整え、肛門を「内側へ持ち上げる」感覚で3秒締め、呼吸は止めずに行います。

薬物療法

薬物療法は、過活動膀胱治療の根幹をなしており、β3アドレナリン受容体作動薬(β3作動薬)と抗コリン薬が、その中心的な役割を担っています。近年では抗コリン剤による副作用の観点からβ3作動薬が第一選択に使われることが多くなりました。過活動膀胱に対する効果は、多くの臨床研究で示されていますが、その一方で治療継続率は、1年で約30%前後と低く、過活動膀胱診療における課題の一つとなっています。

最初に使用した抗コリン薬またはβ3受容体作動薬が効果不十分・有害事象などで継続困難な場合、別の薬剤への変更は推奨されます。また、β3受容体作動薬または抗コリン薬の単独投与の効果が不十分な場合、両者の併用投与も推奨されます。抗コリン薬投与開始時には、併用薬の抗コリン作用の確認が推奨され、副作用に対する適切な対処法も重要です。

男性過活動膀胱・前立腺肥大症の治療

男性過活動膀胱患者の初期治療として、β3受容体作動薬または抗コリン薬の単独投与は推奨されます。前立腺肥大症を有する過活動膀胱患者に対しては、α1遮断薬単独投与、PDE5阻害薬単独投与、5α還元酵素阻害薬単独投与が推奨されます。また、α1遮断薬と抗コリン薬の併用投与、α1遮断薬とβ3受容体作動薬の併用投与も推奨されます。

女性過活動膀胱・骨盤臓器脱の治療

混合性尿失禁に対して、β3受容体作動薬または抗コリン薬の投与は推奨されます。骨盤臓器脱を有する過活動膀胱患者に対しても、β3受容体作動薬または抗コリン薬の単独投与は推奨されます。骨盤臓器脱を有する過活動膀胱患者に対して、骨盤臓器脱手術も推奨され、女性過活動膀胱患者に対して、エストロゲンの局所投与も推奨されます。

難治性過活動膀胱の治療

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法

難治性過活動膀胱に対しては、より専門的な治療法が用いられます。

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は、尿失禁を伴う難治性特発性過活動膀胱患者に対して推奨される治療法です。女性の難治性過活動膀胱に対しても、男性の難治性過活動膀胱に対しても推奨されますが、男性の場合は前立腺肥大症の影響もあるため、前立腺肥大症の治療が優先されます。当院では、薬の処方以外でも、難治性過活動膀胱に対して日帰りでのボトックス膀胱壁内注入療法を積極的に取り入れております。

最新のレーザー治療・磁気治療

最新のFotonaレーザーを用いた日帰りでの低侵襲レーザー治療も注目されています。膣と尿道に対するエルビウムヤグ(Er:Yag)レーザーを用いた治療法は、痛みが少なく、日帰りで行えるため、体への負担が少ないのが特徴です。レーザー治療を受けた患者さんでは、尿漏れの改善と、急な尿意や尿の頻度、夜中のトイレの回数が改善され、膣の健康状態も良くなることが報告されています。

StarFormerは最新の磁気治療器です。専用の椅子に着衣のまま座るだけで、骨盤底と葉仙骨部から強力な磁気パスルで神経・筋肉を刺激して骨盤底筋トレーニングと膀胱機能の改善効果を発揮します。骨盤内の血流が改善することで、慢性的な痛みの治療にも効果あります。

当院では、最新のFotonaレーザーを用いた日帰りでの低侵襲レーザー治療を積極的に取り入れております。この治療法は、薬の使用量を減らすことができるため、副作用のリスクも低く抑えられます。また、長期的な副作用も報告されていません。

過活動膀胱とフレイル・認知機能低下の関係

過活動膀胱は、フレイルや認知機能低下とも関係があります。

フレイル高齢者や認知機能低下高齢者の評価に関しては、特別な配慮が必要です。過活動膀胱診療ガイドライン第3版では、過活動膀胱とフレイル・認知機能低下の関係、高齢過活動膀胱患者に対する治療、難治性過活動膀胱に対する治療、低活動膀胱に伴う過活動膀胱、前立腺がん治療に伴う過活動膀胱などが新規の内容として含まれています。

パーキンソン病のような神経疾患を持つ患者さんでは、患者さんの三~五割で尿意切迫感・夜間頻尿・切迫性尿失禁がみられるとされます。転倒や生活の質の低下、介護負担の増加とも関係するため、早めに泌尿器科を受診し、排尿症状の改善に努めることが重要です。

日常生活での対策と受診の目安

今日からできる実践テクニック

切迫感が来たときは「フリーズ&スクイーズ」を試してみましょう。

急いで走らず、一度立ち止まり、骨盤底筋を小刻みに締めて尿意を弱めます。一分ほど待ち、落ち着いてトイレへ向かえば「間に合う」ことが増えます。日中は「予定トイレ」で先回りし、夜は就寝前の水分を控えめにすることも有効です。

生活調整の重要性

便秘対策(食物繊維・水分・運動)、カフェイン・アルコールの制限、冷え対策、体重管理と歩行運動が血流と自律神経を整えます。寝室からトイレまでの動線を確保し、夜間用の足元灯を置けば転倒予防になります。過活動膀胱の薬物治療において、服薬継続促進のための患者指導も推奨されます。

受診の目安

三週間の自己対策でも改善が乏しい場合、血尿がある場合、発熱・排尿痛がある場合、排尿困難感や尿を出せなくなる尿閉症状がある場合は、早急な受診が必要です。前立腺肥大や残尿の評価も必要です。尿路結石症や前立腺肥大症などにおいて手術が必要な場合は、連携する総合病院での手術治療を行い、術後は当院でのフォローアップも可能です。

まとめ

過活動膀胱は、決して年のせいだからしかたがないという疾患ではありません。

適切な診断と治療により、症状を大きく改善することができます。行動療法から薬物療法、さらには最新のレーザー治療や磁気刺激療法、ボトックス療法まで、さまざまな治療選択肢があります。排尿日誌をつけ、生活習慣を整え、必要に応じて専門医に相談することで、明日の安心につながります。

当院では、従来のやや受診しにくいような泌尿器科のイメージを改善し、もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指しております。困りごとは一人で抱えず、医療者と二人三脚で取り組みましょう。人の心に寄り添うことができるクリニックになるよう、スタッフ一同努めてまいります。

過活動膀胱でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。詳細はこちら:皆川クリニック

著者情報

皆川真吾

医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医

泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医

CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター

埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。

Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/

詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

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