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夜間頻尿の原因と対策|睡眠の質を改善する専門医が教える実践法
夜間頻尿とは何か
夜間、ぐっすり眠りたいのに何度もトイレに起きてしまう・・・そんな経験はありませんか?
「夜間頻尿」とは、夜間就寝中に1回以上排尿のために起きる状態を指します。国際禁制学会の定義によれば、1回でも起きれば夜間頻尿とされていますが、実際に治療が必要かどうかは、この症状が日常生活にどれだけ支障をきたしているかがポイントになります。特に2回以上起きる場合には、睡眠の質が大きく低下し、日中の活動に悪影響を及ぼすことが多くなります。
年齢を重ねるほど夜間頻尿の頻度は高くなり、40歳以上では約4,500万人の方が夜間1回以上排尿のために起きるといわれています。80歳以上の男性では2回以上の方が約8割にも達するのです。50歳以上では実に2人に1人が夜間頻尿に悩んでいるという非常に身近な問題なのです。
夜間頻尿が健康に与える深刻な影響
夜間頻尿は単なる不便さだけでなく、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
睡眠が断続的に中断されることで、睡眠の質が低下し、日中の疲労感や集中力の低下を引き起こします。特に重要なのは、就寝から最初の排尿までの時間です。睡眠には約90分周期のサイクルがあり、最初の3時間が最も深い良質な睡眠が得られる時間帯です。この時間帯に排尿で起きてしまうと、睡眠の質が大きく損なわれてしまいます。
さらに深刻なのは、夜間頻尿がもたらす健康リスクです。夜間に暗い中でトイレに行く際の転倒リスクが高まり、夜間頻尿のある方はない方に比べて骨折による入院の割合がほぼ倍増するというデータがあります。東北大学の研究チームによる5年間にわたる追跡調査では、70歳以上の方で夜中トイレに2回以上起きる人は1回以下の人に比べて、骨折を起こす割合が2倍、死亡率が1.6倍になるという結果も報告されています。
慢性的な睡眠不足はうつ病のリスクを高め、長期的には要介護となる率も上昇させます。特に高齢者にとって、夜間頻尿は単なる不便さを超えた健康リスクとなるのです。

夜間頻尿の主な原因とメカニズム
夜間頻尿の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っています。
夜間多尿型・・・尿量が多いタイプ
夜間に作られる尿の量が多すぎることが原因です。特に男性の夜間頻尿の原因の約7割はこの「夜間多尿」によるものと言われています。1日の総尿量のうち、夜間尿量が33.3%以上になると夜間多尿と診断されます。
夜間多尿の主な原因には、就寝前の過剰な水分摂取、カフェインやアルコールなど利尿作用のある飲食物の摂取、利尿剤やカルシウム拮抗薬などの薬剤の影響があります。また、加齢により抗利尿ホルモンの日内変動が崩れ、夜間尿量が増えることや、糖尿病、心不全、腎不全などの全身疾患も原因となります。
膀胱蓄尿障害型・・・膀胱に尿をあまりためられないタイプ
膀胱の容量が小さくなる、または膀胱が過敏になることで、少量の尿でも排尿したくなる状態です。
この型の主な原因には、過活動膀胱(膀胱が過敏になり、少量の尿でも強い尿意を感じる)、前立腺肥大症(男性特有の疾患で、肥大した前立腺が膀胱や尿道を圧迫する)、膀胱炎(炎症による刺激で膀胱が過敏になる)、残尿(排尿後も膀胱内に尿が残り、機能的な膀胱容量が減少する)などがあります。
睡眠障害型
睡眠の質が低下することで、軽い尿意でも目が覚めてしまう状態です。本来なら眠りが深ければ気にならない程度の尿意でも、睡眠が浅いと目覚めてしまいます。
睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸による低酸素状態で交感神経が優位になり眠りが浅くなることや、心臓への負荷により夜間尿量が増加します。また、不眠症やストレス、就寝時刻の問題なども睡眠の質を低下させる要因となります。

今日から始められる夜間頻尿の対策
夜間頻尿の改善には、生活習慣の見直しが非常に効果的です。
水分摂取のタイミングと量を調整する
夜間頻尿の原因で意外に多いのが、水分の摂りすぎです。夜間頻尿の患者様で水分を適正量まで制限したところ、夜間トイレに起きる回数が1回以上減ったという研究結果も出ています。
適切な水分摂取量は体重あたり20ml(体重60kgの方は1200ml)で、1.5リットルを目安にしましょう。寝る4時間前からの水分は制限し、夕方以降は水分控えめにすることが重要です。利尿作用のあるカフェインやアルコールは夜控え、「寝る前のコップ一杯の水」も控えましょう。水分の多いサラダや果物も夕食では控えめにすることをお勧めします。
塩分を控える
塩分を多く摂ると、喉が乾いて水分を多く摂るため、結果的に夜間の尿量も多くなってしまいます。また、塩分を摂ると血液中にナトリウムが多く入り、腎臓が過剰なナトリウムを体の外に排出しようとするため、尿量が増加します。
横浜市立大学の研究では、低塩分食群(1日6g以下)と高塩分食群(1日12g以下)を比較した結果、低塩分食群に夜間頻尿が少なかったという結果が出ています。うどんやラーメンの汁を飲まない、減塩の調味料を使う、外食は控えるなど、できることから始めてみましょう。
カフェインとアルコールを控える
カフェインやアルコールには利尿作用があり、夜間の尿量を増やします。カフェインには膀胱刺激作用もあるため、少しの尿が溜まっただけでトイレに行きたくなってしまいます。
長崎大学の研究では、アルコールを飲む量に相関して夜間頻尿の回数が増加することが証明されています。夕方以降はカフェインレスやノンアルコール飲料に切り替えることをお勧めします。
足のむくみをケアする
夕方に足がむくみやすい方は、その水分が寝ている間に尿として排出されることで夜間頻尿につながります。日中に弾性ストッキングを着用したり、就寝前に足を高くして横になったりすることで、むくみを改善できます。

専門的な治療が必要な場合
生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合、専門的な治療が必要になることがあります。
薬物療法では、夜間の尿量を減らす薬や、膀胱の過敏性を抑える薬、前立腺肥大症に対する薬などが処方されます。難治性過活動膀胱に対しては、日帰りでのボトックス膀胱壁内注入療法や、最新のレーザーを用いた低侵襲レーザー治療なども選択肢となります。
また、服用している薬が夜間頻尿の原因となっている場合もあります。高血圧や心疾患の治療で処方されるカルシウム拮抗薬や利尿薬は、夜間の尿を増やす副作用があることが知られています。また、糖尿病や心不全に用いるSGLT2阻害薬は、尿中に糖を多く排泄することで尿量も多くなるため頻尿になります。気になる方は主治医に相談してみましょう。
睡眠時無呼吸症候群が原因の場合は、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)の利用が効果的です。睡眠の質を改善することで、夜間頻尿も改善する可能性があります。
まとめ
夜間頻尿は、年齢を重ねるほど多くの方が経験する身近な問題です。しかし、単なる加齢現象として諦める必要はありません。
水分摂取のタイミングと量の調整、塩分・カフェイン・アルコールの制限、足のむくみケア、適度な運動など、生活習慣の見直しだけで大きく改善するケースも少なくありません。これらの対策を実践することで、1晩に5回起きていた方が2~3回または0回にまで改善することも珍しくないのです。
ただし、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合や、日常生活に大きな支障をきたしている場合は、専門的な治療が必要になります。我慢すること無く、是非一度ご相談ください。
夜間頻尿の改善は、健康長寿のカギとなります。質の良い睡眠を取り戻し、すっきりした頭と身体で1日を過ごしましょう。
夜間頻尿でお悩みの方は、お気軽に皆川クリニックへご相談ください。泌尿器科専門医として、お一人お一人の症状に合わせた最適な治療法をご提案いたします。
著者情報
皆川真吾
医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医
泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医
CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター
埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。
Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/
詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

