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尿漏れ治療の新常識|座るだけで効果を実感できる電磁刺激治療とは

尿漏れに悩む方へ|恥ずかしさから解放される新しい選択肢

咳やくしゃみをした瞬間、思わず漏れてしまう。

そんな経験をお持ちの方は、決して少なくありません。尿漏れは、年齢や性別を問わず多くの方が抱える悩みですが、恥ずかしさから誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまうケースが非常に多いのが実情です。特に女性では出産や加齢による骨盤底筋の緩みが原因となることが多く、男性では前立腺の手術後に尿漏れが生じることがあります。

従来の治療法としては、骨盤底筋トレーニングや薬物療法が中心でしたが、継続が難しかったり、十分な効果が得られなかったりすることも少なくありませんでした。しかし、近年の医療技術の進歩により、「座るだけで効果を実感できる」という画期的な治療法が登場しています。それが「電磁刺激治療」です。

本記事では、泌尿器科専門医の視点から、尿漏れの原因や従来の治療法の課題、そして最新の電磁刺激治療について詳しく解説します。

尿漏れが起こる仕組み|骨盤底筋の役割とは

尿漏れを理解するためには、まず骨盤底筋の役割を知ることが重要です。

骨盤底筋とは、骨盤の底でハンモックのように膀胱や子宮、直腸などを下から支える筋肉群のことを指します。この筋肉がしっかりと働いていれば、腹圧がかかったときでも膀胱や尿道を支え、尿漏れを防ぐことができます。しかし、出産や加齢、肥満などの影響で骨盤底筋が弱くなると、くしゃみや咳、ジャンプなどのちょっとした動作で尿が漏れてしまうのです。

このタイプの尿漏れを「腹圧性尿失禁」と呼びます。

女性の場合、妊娠・出産によって骨盤底筋が大きく伸ばされることで損傷したり、元の締まりが弱くなったりすることがあります。出産直後は約3割の女性に尿漏れが起こりますが、多くは数ヶ月以内に自然と改善します。しかし、高齢出産や複数回の出産を経験している場合、ダメージが蓄積して筋力が回復しにくくなります。

また、更年期を迎えると女性ホルモンの分泌が急激に減少し、筋肉量や骨量も低下します。これにより、40代以上の女性の約半数が尿漏れを経験しているというデータもあります。

男性の場合は、前立腺がんの手術後に尿漏れが生じることがあります。前立腺の尿道側には尿道括約筋が取り巻いており、手術の際にがんの取り残しがないように括約筋を一部切除してしまうことがあるため、手術直後に尿漏れを経験する場合があります。術後早期から適切な対策を行うことが、尿漏れの改善に非常に重要です。

従来の治療法とその課題|なぜ続かないのか

尿漏れの治療法として、これまで主に行われてきたのは「骨盤底筋トレーニング」と「薬物療法」です。

骨盤底筋トレーニング、いわゆるケーゲル体操は、骨盤底筋を意識的に収縮させることで筋力を強化する方法です。正しく行えば、約50~70%の症状改善が期待できるとされています。しかし、実際には正しい方法で継続的に行える方は少なく、効果を実感するまでに時間がかかることも課題でした。

多くの医療機関では、看護師が簡単なパンフレットを渡して口頭で説明するだけというケースが多く、「肛門をしっかり締めましょう」といった指導を受けることがほとんどです。しかし、肛門を締めても尿道括約筋のトレーニングにはなりません。女性では膣を締めることが重要ですが、男性は膣がないため、意識して締める部位がわかりにくいのです。

実際、当院を受診される患者さんにトレーニングをしてもらうと、頑張って肛門を締め、同時に腹筋を使ってしまっている方が非常に多いです。

腹筋をはじめとするアウターマッスルを使ってしまうと、尿漏れに対しては全くの逆効果になってしまいます。このように、骨盤底筋トレーニングは正しい方法を習得することが難しく、また継続性の観点からも効果が限定的でした。

薬物療法については、過活動膀胱に対して抗コリン薬やβ3作動薬が使用されますが、口渇や便秘などの副作用が問題となることがあります。また、腹圧性尿失禁に対しては薬物療法の効果が限定的であることも課題でした。

これらの従来の治療法で十分な効果が得られない場合、手術療法という選択肢もありますが、手術に対する抵抗感や、ダウンタイムの問題から、なかなか踏み切れない方も多いのが現状です。

電磁刺激治療とは|座るだけで骨盤底筋を鍛える新技術

そこで注目されているのが「電磁刺激治療」です。

電磁刺激治療は、椅子型の装置に座るだけで骨盤底筋を効果的に鍛えることができる画期的な治療法です。座面下と腰部に内蔵された刺激コイルから磁気エネルギーが出力され、そのパルス磁場によって患者さんの生体内に過電流を発生させ、骨盤底領域の神経、主に陰部神経と腰仙骨部の神経を刺激します。これにより排尿筋の過活動を抑制し、同時に骨盤底筋を収縮させることで筋力強化の効果も期待できます。

この治療法の最大の特徴は、着衣のまま座った姿勢で行えるため、患者さんの負担が非常に少ないという点です。電気刺激と異なり、磁気刺激は電極を必要とせず、磁気刺激に用いるコイルは皮膚に接触させる必要がないため、服を着たままで問題なく刺激が可能です。また、痛みがほとんどなく、刺激の強さは患者さんに合わせて調整できるため、許容できる上限での治療を行うことができます。

1回の治療時間は30分間で、週に2回程度、8回を1クールとして実施します。。

2019年に発刊された「女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版」では、磁気刺激療法が尿失禁治療に対して推奨グレードA、つまり「行うよう強く勧められる」に認定されました。これは、医学的なエビデンスに基づいて、その効果が高く評価されているということを意味します。

治療効果については、個人差がありますが、過活動膀胱では早い方で治療直後に効果を感じることもあります。腹圧性尿失禁の場合は、継続が必要で1~2ヶ月後に効果を感じることが多いです。基本的には週2回、4~8週間の治療をお勧めしており、治療効果が現れれば、週1回程度に回数を減らして継続していきます。

この治療法は、本人の努力を必ずしも必要としないため、高次脳機能障害や認知症がある方にも適用可能なことが多く、多くの尿失禁患者さんに用いることができます。

電磁刺激治療の適応と効果|どんな方に向いているのか

電磁刺激治療は、以下のような方に特に適しています。

  • 過活動膀胱でお困りの方
  • 産後の尿漏れや腹圧性尿失禁でお困りの方
  • 前立腺がん手術後の尿漏れでお困りの方
  • 慢性前立腺炎でお困りの方
  • 従来の治療で十分な効果が得られなかった方

特に前立腺がん手術後の尿漏れについては、術後早期から対策を行うことが非常に重要です。

前立腺がん術後の尿漏れは、退院時にパッドなしで過ごせる方は約15%、1ヶ月後で約30%、3ヶ月後で約50%、6ヶ月後で約70%、1年後で約75%とされています。術後6ヶ月までは尿漏れが急速に改善していきますが、6ヶ月を超えると1年経ってもあまり改善がみられないことが多いのです。つまり、術後半年で漏れがよくならない方は危険信号であり、術後早い段階で尿漏れの対策をしっかり行うことが非常に大切です。

当院では、電磁刺激治療(スターフォーマー)による骨盤底筋トレーニングを行っています。症状に合わせて内服治療を併用します。この2本立てのアプローチにより、より効果的な尿漏れ改善を目指しています。

治療中の注意点としては、磁気を発生するため、携帯電話やスマートフォンの使用は控えていただいております。機器故障やスマートフォンの故障の原因になる恐れがあるためです。また、服を脱ぐ必要はなく、服を着たまま、服の上から治療が可能です。

皆川クリニックでの尿漏れ治療|患者さんに寄り添う医療を

当院では、尿漏れでお困りの患者さんに対して、さまざまな治療選択肢を提供しています。

従来の薬物療法はもちろん、難治性過活動膀胱に対しては日帰りでのボトックス膀胱壁内注入療法、最新のFotonaレーザーを用いた日帰りでの低侵襲レーザー治療なども積極的に取り入れています。尿路結石症や前立腺肥大症などにおいて手術が必要な場合は、連携する総合病院での手術治療を行い、術後は当院でのフォローアップも可能です。

泌尿器科は「相談するのが恥ずかしい」「年のせいだからしかたがない」といったイメージをお持ちの方が多いと思います。しかし、頻尿や尿漏れといったトラブルは、実は比較的若い年代を含めて多くの方が悩んでいるのが実情です。排尿の症状は薬の内服で緩和することができますが、生活習慣や日頃のストレスからも影響を受けますので、さまざまな視点から治療に取り組むことが必要です。

我慢すること無く是非一度ご相談ください。

今までのやや受診しにくいような泌尿器科のイメージを改善し、もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指しております。人の心に寄り添うことができるクリニックになるよう、スタッフ一同努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

尿漏れは決して恥ずかしい悩みではありません。適切な治療で改善できる症状です。日常生活に支障を来している場合は、早めに専門医へ相談することをお勧めします。

詳しい治療内容や診療時間については、皆川クリニックの公式サイトをご覧ください。皆さまのご来院を心よりお待ちしております。

著者情報

皆川真吾

医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医

泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医

CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター

埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。

Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/

詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

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