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男の子の包茎~専門医が教える適切な相談と治療のタイミング

男の子の包茎とは?正しい理解から始めましょう

男の子の包茎について、保護者の方から多くの相談を受けることがあります。「うちの子は包茎だけど大丈夫なのか」「手術は必要なのか」といった不安の声をよく耳にします。

包茎とは、おちんちんの先端(亀頭)が包皮に覆われている状態のことです。実は、生まれたての赤ちゃんはほぼ100%が包茎の状態であり、これは正常な生理的現象なのです。

生まれたばかりの赤ちゃんは、包皮と亀頭が分離していない状態が普通です。これは「生理的癒着」と呼ばれ、成長とともに自然に剥がれていくものです。無理に剥こうとすると、炎症や傷の原因になりますので注意が必要です。

年齢によって包茎の割合は変化していきます。非飜転生包皮(引っ張っても亀頭部が露出しない包茎)は、新生児ではほぼ100%、1歳までの乳児では約80%、1歳から5歳の幼児では約60%、小学生では約30%程度と言われています。そして思春期を過ぎると、多くの男児は自然と包皮が剥けるようになるのです。

包茎の種類と子どもに起こりうる症状

包茎には主に「仮性包茎」と「真性包茎」の2種類があります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。

仮性包茎は、普段は包皮に覆われていますが、手で引っ張ったり勃起したりすると亀頭が露出する状態です。多くの男性がこのタイプに該当し、基本的には医学的な問題はありません。

一方、真性包茎は包皮口が狭く、引っ張っても亀頭が露出しない状態です。この場合、清潔を保つことが難しく、炎症や感染症のリスクが高まることがあります。

さらに注意が必要なのが「嵌頓包茎(かんとんほうけい)」です。これは包皮を無理に引っ張って亀頭を露出させた後、元に戻せなくなった状態で、緊急性の高い症状です。亀頭が腫れ上がり、強い痛みを伴います。このような状態になったら、すぐに医療機関を受診してください。

子どもの包茎で見られる主な症状には以下のようなものがあります。

  • 亀頭包皮炎:包皮の内側に細菌が感染して赤く腫れたり、白い膿が出たりする状態
  • 排尿時の膨らみ:おしっこをすると包皮が風船のように膨らむ現象
  • 恥垢(ちこう)の溜まり:包皮の下に黄色い脂肪のような物質が溜まる状態

これらの症状があるからといって、すぐに手術が必要というわけではありません。多くの場合、適切なケアで改善します。

子どもの包茎はいつ治療すべき?専門医の見解

結論から言うと、子どもの包茎のほとんどは治療の必要がありません。自然に改善するのを待つことが基本です。

では、どのような場合に医療機関を受診すべきなのでしょうか。泌尿器科専門医の立場から、以下のケースでは相談をお勧めします。

  • 繰り返し亀頭包皮炎を起こしている
  • 排尿時に痛みがある、または排尿困難がある
  • 包皮が極端に狭く、おしっこが風船のように膨らむ
  • 思春期(12~15歳)を過ぎても包皮が全く剥けない
  • 嵌頓包茎の状態になった(これは緊急受診が必要です)

特に注意すべきなのは、無理に包皮を剥こうとすることです。「早く剥いた方がいい」という誤った考えから、保護者が強引に剥こうとして傷つけてしまうケースがあります。これは炎症や癒着の原因となり、かえって状態を悪化させることがあります。

お子さんの状態が気になる場合は、まずは泌尿器科専門医に相談してみませんか?

包茎治療の選択肢~手術が必要なケースとは

子どもの包茎に対する治療には、大きく分けて「保存的治療」と「手術療法」があります。まずは保存的治療から試みるのが一般的です。

保存的治療の代表的なものに「ステロイド軟膏療法」があります。これは包皮を優しく引っ張りながらステロイド軟膏を塗布する方法で、皮膚を柔らかくして伸展性を高める効果があります。

具体的なやり方としては、入浴時に1日1回、痛くない程度に包皮を引っ張り、狭くなっている部分を中心に軟膏を塗ります。平均すると約1ヶ月半ほどで尿道口が見えるようになることが多いです。その後も1年程度は包皮を引っ張る習慣を続けるとよいでしょう。

この治療法の有効率は67~90%と言われており、1年以上続けても全身への副作用はないとされています。

一方、手術が必要となるのは以下のようなケースです。

  • 保存的治療を十分に行っても改善しない
  • 繰り返し包皮炎を起こす
  • 包皮が傷ついて硬くなってしまった(瘢痕化)
  • 勃起時に痛みがある
  • 思春期を過ぎても真性包茎が改善しない

手術には「包皮口拡大術(背面切開)」と「環状切開術」の2種類があります。包皮口拡大術は包皮の狭い部分を縦に切開して横に縫合することで広げる方法で、術後は仮性包茎の状態になります。環状切開術は包皮を大きく切り取って常に亀頭が露出した状態にする方法です。

日本では、年少の子どもには包皮口拡大術を、思春期前後の子どもには環状切開術を検討するケースが多いようです。これは日本の文化的背景や学校生活への配慮によるものです。

日常生活での包茎ケア~家庭でできること

お子さんの包茎に対して、家庭でできるケアについてお伝えします。基本は「清潔に保つこと」と「無理に剥かないこと」です。

まず、入浴時の洗い方ですが、包皮を無理に引っ張らず、優しく洗うことが大切です。石鹸をつけて外側から軽く洗い、よくすすぐだけで十分です。

  • 包皮の先から石鹸水を入れて、おしっこをするように出す
  • 包皮を引っ張らずに外側から優しく洗う
  • 清潔な水でしっかりすすぐ
  • タオルで優しく拭く

また、排尿後は包皮の先を軽く押さえて、中に残った尿を出すようにするとよいでしょう。

包皮の下に溜まる「恥垢(ちこう)」は、基本的には自然に排出されるもので、無理に取り除く必要はありません。むしろ、無理に剥いて取ろうとすると傷つける原因になります。また、恥垢は包皮と亀頭部の癒着を徐々に剥がす作用があり、正常な成長のプロセスで自然に排出されます。

お子さんが自分で包皮を引っ張って遊んでいることがありますが、これは自然な行為です。痛がっていなければ特に止める必要はありません。むしろ、自然な成長過程の中で包皮が剥けていくきっかけになることもあります。

日常生活の中で気をつけるべき点として、下着は綿素材の通気性の良いものを選び、こまめに取り替えることも大切です。

包茎に関する誤解と真実~親が知っておくべきこと

包茎に関しては様々な誤解があります。ここでは、よくある誤解と真実についてお伝えします。

まず、「包茎は早く治さないといけない」という考えは誤りです。前述のとおり、子どもの包茎のほとんどは成長とともに自然に改善します。無理に早く治そうとすることで、かえって問題を引き起こすことがあります。最も注意すべき点は、無理に無効として傷を付けてしまうことです。包皮や亀頭との癒着部に傷が付くと、瘢痕化と言って固く癒着し、より悪化させてしまうことがあります。瘢痕化や癒着を起こすと手術もやりにくくなり、美容の観点からも悩みが続くことになる可能性があります。

次に、「包茎は不潔」という誤解があります。適切に洗浄していれば、包茎であっても清潔を保つことは十分可能です。むしろ、幼少期は包皮が亀頭を保護する役割も果たしています。

また、「包茎は遺伝する」という話もありますが、明確な科学的根拠はありません。体質的な要素はあるかもしれませんが、単純に遺伝するものではないと考えられています。

「包茎だと将来性機能に問題が出る」という心配をされる方もいますが、仮性包茎であれば機能的な問題はほとんどありません。真性包茎で症状がある場合は適切な治療を行うことで解決できます。

最後に、「割礼(環状切開)は必ず必要」という考えも誤りです。宗教的な理由がない限り、医学的に必要な場合にのみ検討されるべきものです。

まとめ~子どもの包茎と上手に向き合うために

子どもの包茎について、ポイントをまとめておきましょう。

  • 新生児から幼児期の包茎は正常な生理現象であり、多くは成長とともに自然に改善する
  • 無理に包皮を剥こうとせず、自然な成長を見守ることが基本
  • 繰り返す炎症や排尿障害がある場合は専門医に相談する
  • 保存的治療(ステロイド軟膏療法など)で改善することが多い
  • 手術は必要な場合にのみ検討する
  • 日常的には清潔に保つことを心がける

お子さんの体の成長は一人ひとり異なります。焦らず、お子さんの状態をよく観察しながら、必要に応じて専門医に相談することが大切です。

包茎に関する不安や疑問があれば、泌尿器科専門医にご相談ください。皆川クリニックでは、お子さんの包茎や夜尿症などの小児泌尿器疾患に対して、専門的な診療を行っています。お子さんとご家族に寄り添った丁寧な診療を心がけておりますので、お気軽にご相談ください。

皆川クリニックでは、お子さんの泌尿器のお悩みに対して、泌尿器科専門医による適切な診断と治療を提供しています。詳しくはクリニックWebサイトをご覧ください。

著者情報

皆川真吾

医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医

泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医

CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター

埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。

Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/

詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

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