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男性ホルモン補充療法の効果と注意点|テストステロン治療で改善が期待できる症状を解説
男性ホルモン補充療法とは
男性ホルモンの代表格である「テストステロン」は、男性の健康において極めて重要な役割を担っています。
このホルモンは精巣や副腎などで産生され、血中ではアルブミン結合型や遊離型などのいくつかの形に分かれて存在しています。テストステロンは総じて加齢により減少しますが、その中でも遊離テストステロンは年齢の影響を受けやすく、20~30代をピークに減少することが知られています。また、ストレスや過剰な飲酒、運動不足なども、テストステロンの分泌量を減少させる要因の一つです。
テストステロンの分泌量が減少すると、体力や性欲の低下、集中力の欠如といった症状が見られるようになることがあります。テストステロン補充療法により不足するテストステロンを補い、分泌量低下によって生じる不調を改善する方法も検討できるでしょう。

男性更年期障害とテストステロン補充療法
加齢によりテストステロンなどの男性ホルモンの分泌量が減少し、さまざまな不調が見られることを「男性更年期障害」と呼びます。
人工的に男性ホルモンを補うテストステロン補充療法は、男性更年期障害の治療方法としても用いられることがあります。テストステロンの平均分泌量は加齢とともに減少しますが、個人差が大きい点に注意が必要です。30代、40代になってから急激に分泌量が減少する方もいれば、高齢になっても若い頃と分泌量がほとんど変わらない方もいます。加齢により急激に分泌量が減る場合は、不調を感じやすいため、男性更年期障害の治療も検討できるでしょう。
また、テストステロンは、筋肉量や筋力の維持、内臓脂肪のコントロールに関与することが知られています。これらの身体的変化に対し、医師の診断のもとでテストステロン補充療法が治療法の一つとして実施されることがあります。
男性更年期障害の主な症状
男性更年期障害は、大きく分けて3つの症状が挙げられます。
- 精神的症状・・・抑鬱、苛立ち、不安、疲労感など
- 身体的症状・・・発汗、睡眠障害、ほてり、集中力低下など
- 性機能関連症状・・・性欲低下、勃起障害、達成感消失など
男性ホルモン(テストステロン)が減少し、このような症状が起こることを男性更年期障害とよびます。45歳以上の男性のうち40%は、男性ホルモンが低下しているといわれています。
テストステロン補充療法で改善が期待できる症状
テストステロン補充療法を受けることで、男性ホルモンの減少により生じるさまざまな症状の改善を期待できます。
疲労感の改善
男性更年期障害の代表的な症状のひとつに、疲労感があります。疲れやすくなった、疲れがなかなか回復しないといった症状が見られるときは、クリニックに相談し、テストステロン補充療法を検討できるかもしれません。
朝目覚めた時の疲労感が軽減し、日中の活動性が向上する効果が期待できます。
多汗・ほてり・めまいの改善
運動をしたわけでもないのに汗をかく、ほてりやすくなった、めまいがするといった症状も、男性更年期障害ではよく見られます。また、頭痛や耳鳴りを感じるケースもあります。
筋力低下の改善
テストステロンには、筋肉の成長と維持を促進する役割もあります。分泌量が減少すると、筋肉がつきにくくなる一方で、脂肪がつきやすくなります。生活や運動習慣が変わっていないのに身体のたるみを感じるときは、もしかしたらテストステロンの分泌量が減少しているのかもしれません。
筋力が増加することで、身体が動かしやすくなったり、骨密度が維持・向上したりすることも期待できます。
イライラ・不安感・無気力の改善
男性ホルモンの分泌量が減少すると、イライラする、不安感が強くなる、何事にもやる気が出ないといった精神的な症状が現れることがあります。
意欲的に物事に取り組めるようになる、気分が安定し、感情の起伏が少なくなる効果が期待できます。
性欲減退・勃起障害(ED)の改善
性的な関心が薄れてパートナーとの性生活が減る、勃起障害(ED)といった症状も、テストステロンの低下と関連があると言われています。
テストステロンが低下する性腺機能低下症の患者さんは、テストステロン補充療法により、EDが改善する可能性があります。性欲が改善する効果も期待できます。

テストステロン補充療法の治療方法
テストステロン補充療法は「男性ホルモン注射」とも呼ばれることからもわかるように、注射で実施されることが一般的です。
治療は2週間~1カ月に1回のペースで筋肉注射を行います。使用する薬剤や投与量は、患者さんの状態に合わせて決定するのが一般的です。例えば、テストステロンエナント酸エステル製剤を用いる場合、1回あたり125mgもしくは250mgを投与します。
一部のクリニックでは、内服薬や外用薬でテストステロン補充療法を受けられます。注射が苦手な方や抵抗を感じる方は、内服薬や外用薬に対応しているクリニックを探してみましょう。
テストステロン補充療法の注意点
テストステロン補充療法を検討する際には、いくつかの重要な注意点があります。
治療を受けられないことがある
テストステロンは前立腺の成長や働きにも関わるホルモンのため、補充療法を行う前には前立腺の状態を確認することが大切です。前立腺がんや重度の前立腺肥大症がある場合、治療を受けられないことがあります。また、睡眠時無呼吸症候群がある方も悪化するリスクがあるため、基本的に禁忌となっております。
治療が開始される前には、血液検査でテストステロンの値はもちろんのこと、赤血球数や肝機能なども調べます。これらの検査結果を総合的に判断し、テストステロン補充療法が必要かどうか、そして注射による治療が最適かどうかを医師が決定します。
保険適用と自費診療について
保険適用の基準として、一般的には総テストステロン値が250ng/ml未満または遊離テストステロン値が7.5pg/mL未満の場合に、補充療法の対象となります。ただし、数値が基準を満たしていなくても、症状が明らかであれば治療が検討されることもあります。
自費の場合は一定の費用がかかることを理解しておく必要があります。EDの改善を目的とした治療は、保険診療ではなく自費診療となります。
副作用が見られることがある
どのような治療にもメリットとデメリットがあるように、テストステロン補充療法にも副作用のリスクがあります。赤血球数の増加、肝機能への影響、皮膚の変化などが報告されています。
定期的な検査と医師の管理のもとで治療を受けることが重要です。
効果を得られないこともある
すべての方に同じように効果が現れるわけではありません。個人差があり、期待した効果を得られないこともあることを理解しておく必要があります。
テストステロンと排尿トラブルの関係
実は、テストステロンは排尿機能にも深く関わっています。
40代以降の男性に多い「尿の勢いが弱くなった」「夜間に何度もトイレに行く」といった悩みの背景には、このホルモンの減少が隠れているかもしれません。膀胱の筋肉を元気に保ち、尿道周りの筋肉の柔軟性を維持する働きがあるテストステロン。このホルモンが減ると、排尿に関わる筋肉や神経の働きにも変化が生じてきます。
加齢に伴うテストステロンの減少は、夜間尿量を制御する重要なホルモンである抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌を減少させ、夜間頻尿のリスクを高めることが指摘されています。テストステロンを補充すると、夜中につくられる尿を減らすバソプレシンの分泌が増えることがわかっています。

テストステロン値を高める生活習慣
LOH症候群に対してテストステロン補充療法は有効な手段ですが、漫然と投与を続けると、本来体内でテストステロンを生産する機能が低下してしまいます。体調が良いときはテストステロンを高めていくように生活習慣の改善が大切です。テストステロン値を高めるためには、薬物療法だけでなく、日常生活の中でできることがたくさんあります。
適切な運動
適切な運動は、テストステロン値を上げる最も効果的な方法の一つです。特に「筋力トレーニング」と「高強度インターバルトレーニング(HIIT)」が効果的とされています。ただし、過度な運動はかえってテストステロン値を下げることがあるので注意が必要です。
大きな筋肉を動かし刺激を与えると、テストステロンの分泌が促されます。筋力トレーニングや、階段の上り下り、速歩きなどの適度な運動を毎日10分間程度継続していきましょう。
十分な睡眠
十分な睡眠も非常に重要です。テストステロンは主に睡眠中に分泌されるため、質の良い睡眠を確保することが大切です。7〜8時間の睡眠を心がけましょう。
夜更かしをしないことも大切です。テストステロンは、夜、寝ている時間に多く分泌されます。特に夜中1時から3時頃はしっかり眠っているようにしましょう。
ストレスの管理
ストレスの管理も重要です。ストレスが続くとコルチゾールというホルモンが分泌され、テストステロンの産生を抑制してしまいます。心理的ストレスを長く受け続けて交感神経優位の状態が続くと、大脳から男性ホルモンを作らないように指令が出されてしまいます。
まとめ
男性ホルモン補充療法は、テストステロンの低下によって生じる様々な症状の改善が期待できる治療法です。
疲労感、多汗・ほてり・めまい、筋力低下、イライラ・不安感・無気力、性欲減退・勃起障害(ED)など、多岐にわたる症状に対して効果が期待できます。治療方法としては注射が一般的ですが、内服薬や外用薬による治療も選択可能です。ただし、治療を受けられないケースや副作用のリスク、費用面での考慮も必要です。
また、テストステロンは排尿機能にも深く関わっており、夜間頻尿などの改善にもつながる可能性があります。生活習慣の見直し、適切な運動、十分な睡眠、ストレス管理などを通じて、テストステロン値を自然に高めることも可能です。
「年だから仕方ない」と諦めていた症状も、適切な治療や生活習慣の改善で解決できる可能性があります。気になる症状がある方は、専門医に相談してみることをおすすめします。
皆川クリニックでは、泌尿器科専門医として男性更年期障害をはじめとする様々な泌尿器科疾患の診療を行っています。もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指しておりますので、排尿のお悩みや男性ホルモンに関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。詳細は皆川クリニックの公式サイトでご確認いただけます。
著者情報
皆川真吾
医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医
泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医
CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター
埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。
Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/
詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

