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糖尿病と尿の変化|甘いにおい・多尿が気になったときに受けたい検査
糖尿病の初期症状として現れる尿の変化
糖尿病は自覚症状に乏しい疾患として知られていますが、実は尿に特徴的な変化が現れることがあります。
「最近、トイレに行く回数が増えた」「尿から甘いにおいがする気がする」・・・こうした変化を感じたことはありませんか?
これらは身体が発する重要なサインかもしれません。糖尿病の初期段階では、血液中の糖が腎臓を通じて尿に漏れ出すことで、尿の性状に様々な変化が生じます。甘いにおいや多尿といった症状は、高血糖状態が続いていることを示唆する可能性があるのです。
早期発見と適切な対応が、糖尿病の重症化を防ぐ鍵となります。本記事では、泌尿器科専門医の視点から、糖尿病に伴う尿の変化について詳しく解説し、気になる症状が現れたときに受けるべき検査や対策をご紹介します。

糖尿病で尿に甘いにおいが出る理由
高血糖による尿糖の排出メカニズム
健康な状態では、血液中のブドウ糖は腎臓で再吸収され、尿中にはほとんど排出されません。
しかし、糖尿病によって血糖値が高くなると、腎臓の再吸収能力を超えてしまいます。腎臓が再吸収できる糖の量には限界があり、血糖値が160〜180mg/dL以上になると、余分な糖が尿中に漏れ出してしまうのです。
尿中に多量の糖分が含まれると、果実のような甘い、あるいは甘酸っぱいにおいが発生します。一方で、「果物が腐ったような甘酸っぱいにおい」や「除光液のようなツンとするにおい」がする場合は、次に解説する「ケトン体」が出ている可能性があり、より危険なサインです。このにおいはかなり独特で、一度経験すると忘れられないほどの特徴があります。ただし、食べ物の影響でも尿のにおいは変化するため、甘いにおいだけで判断するのは避けるべきです。
※SGLT2阻害薬という糖尿病の薬を飲んでいる方は、薬の効果で尿糖が出るため、心配しすぎる必要はありません。
ケトン体による甘酸っぱいにおい
糖尿病が進行すると、インスリンの作用不足により、身体が糖をエネルギー源として使えなくなります。
すると身体は脂肪を分解してケトン体という物質を作り出し、代替エネルギーとして利用しようとします。このケトン体が尿中に排出されると、果物が熟れすぎた時のような甘酸っぱいにおいを発することがあります。これは糖尿病が重症化しているサインであり、糖尿病性ケトアシドーシスという昏睡状態になりかねない危険な状態ですので、早急な医療機関の受診が必要です。
重症の糖尿病では、濃い濃度の尿糖とケトン体が混ざることで、特徴的な甘い匂いが強くなります。この状態は糖尿病性ケトアシドーシスという危険な合併症の前兆である可能性もあるため、注意が必要です。
出典名和内科クリニック「糖尿病患者さんの尿の特徴」より参照 作成

多尿が起こるメカニズムと浸透圧利尿
高血糖が引き起こす尿量の増加
糖尿病の代表的な症状の一つが多尿です。
高血糖状態が続くと、腎臓が糖をすべて再吸収できなくなり、糖が尿に漏れ出します。この尿中の糖が水を引き寄せる性質を持つため、身体の水分がどんどん尿に引き出されてしまうのです。この現象を「浸透圧利尿」と呼びます。
浸透圧利尿により尿の量が増え、尿が薄まって透明っぽくなります。健康な方の尿の色は淡黄色や淡黄褐色であることが多いのですが、糖尿病の多尿の段階の方の方はほぼ透明であることが特徴的です。これは高血糖で喉が渇き、水分を多く摂取するため、トイレに行く回数が増えることに起因します。しかし、さらに症状が進行して脱水状態に陥ると、逆に尿の色が濃くなることもあります。「透明だから大丈夫」とは限らない点に注意が必要です。
多尿・口渇・多飲の悪循環
多尿による脱水、脱水による喉の渇き、喉の渇きによる多飲の3セットが糖尿病の初期症状として知られています。
尿量が増えることで身体の水分が減り、喉が渇きます。喉が渇くと水分を多く摂取し、さらに尿量が増えるという悪循環に陥ります。この悪循環が続くと、脱水傾向になり、尿の色が濃くなることもあります。
一日の尿量が3リットルを超える場合や、夜間に何度もトイレに起きるようになった場合は、糖尿病の可能性を疑う必要があります。ただし、健康な方でも大量に水分を摂った後には透明な尿が出ることがあるため、尿の色だけで判断するのは避けるべきです。
出典四谷・番町内科「糖尿病の尿の色は何を語るのか!変化の仕組みと気を付ける点を解説」より参照 作成

尿の泡立ちや色の変化にも注目
尿の泡立ちが示すタンパク尿
「きめ細かい泡の尿が出た」「泡立つと糖尿病の疑いあり」と聞いたことはありませんか?
確かに糖尿病の方では、尿中に糖やタンパク質が多く混ざるため泡立ちます。特にタンパク質が混ざることによる泡立ちには特徴があり、短時間で泡が消えません。健康な方の尿では泡立ってもすぐに消えますが、タンパク尿の場合は泡が残り続けます。
尿中にタンパク質が出る原因は腎臓機能の低下です。高血糖が続くと糸球体が硬くなり、本来は再吸収されるべきタンパク質が尿に漏れ出してしまいます。これは糖尿病性腎症の初期症状である可能性があり、早期発見が重要です。
尿の色が濃くなる場合の注意点
「濃い色の尿が出たのですが、糖尿病でしょうか」という質問を受けることがあります。
一般的に、糖尿病の可能性は低いと考えられます。しかし、糖尿病の方が高血糖を放置していると、尿量が増えて脱水傾向になり、尿の色が濃くなることがあります。また、肝臓や胆のうなどに異常が起きている場合、ビリルビンという物質をうまく代謝できなくなり、ビリルビン尿という独特のにおいを持つ濃い色の尿が出ることもあります。
尿の色、におい、泡立ちなど、何か気になることがありましたら、自己判断せずに医療機関を受診することをお勧めします。
出典名和内科クリニック「糖尿病患者さんの尿の特徴」より参照 作成
気になる症状が出たときに受けるべき検査
尿検査で分かること
尿検査は健康診断でも必ず実施される基本的な検査です。
成分を調べることでさまざまな病気を発見できるからです。糖尿病の診断においては、尿糖検査と尿中アルブミン検査が重要な役割を果たします。尿糖検査では、尿中に糖が含まれているかどうかを調べます。尿糖が陽性であれば、血糖値が高い可能性が示唆されます。
尿中アルブミン検査は、腎臓の機能を評価するための検査です。微量アルブミン尿が検出されると、糖尿病性腎症の早期段階である可能性があります。早期発見により、腎機能の悪化を防ぐための治療を開始できます。
血液検査による血糖値とHbA1cの測定
糖尿病の確定診断には血液検査が不可欠です。
血糖値検査では、その時点での血液中のブドウ糖濃度を測定します。空腹時血糖値が126mg/dL以上、または随時血糖値が200mg/dL以上の場合、糖尿病が疑われます。HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)検査は、過去1〜2ヶ月間の平均的な血糖値を反映する指標です。HbA1cが6.5%以上であり、かつ血糖値も基準を超えている場合、初回検査ですぐに「糖尿病」と診断されます。HbA1cが6.5%以上の場合、糖尿病と診断されます。
血液検査と尿検査を組み合わせることで、より詳しく糖尿病の状態を把握することができます。定期的な検査により、血糖コントロールの状態を確認し、合併症の予防につなげることが可能です。
泌尿器科での専門的な検査
尿の変化が気になる場合、泌尿器科での受診も選択肢の一つです。
泌尿器科では、尿路感染症や膀胱炎など、尿のにおいや性状に影響を与える他の疾患を除外することができます。排尿時痛や頻尿、残尿感などの症状がある場合は、膀胱炎の可能性も考えられます。膀胱炎になると、膀胱の中の尿中に含まれる尿素を細菌が分解してアンモニアを作るため、出したばかりのおしっこでも臭いがキツくなります。
当院「皆川クリニック」では、泌尿器科専門医として、排尿に関するお悩みに幅広く対応しております。頻尿や尿漏れといった症状は、比較的若い年代を含めて多くの方が悩んでいる実情があります。もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指しておりますので、気になる症状がありましたら、我慢せずにご相談ください。
出典アナムネ「糖尿病の検査は何科で受けられる?検査方法や自宅でできるセルフチェックを紹介」より参照 作成

糖尿病の早期発見と治療の重要性
自覚症状が乏しい糖尿病の怖さ
糖尿病は初期の自覚症状がほとんどなく、気づいたときには重篤化してしまっている恐ろしい病気です。
糖尿病の自覚症状として代表的なものには、頻尿、口の渇き、体重減少、常に空腹感がある、視力低下、全身の倦怠感、怪我が治りにくい、感染症にかかりやすいなどがあります。しかし、これらの自覚症状は糖尿病が悪化してから感じられるようになります。つまり、自覚症状が出る頃には、臓器の状態がかなり悪く、失明や血液透析直前の状態である恐れがあるのです。
糖尿病の怖さは合併症にあると言われています。放置しておくと数年から10年程度でさまざまな病気を引き起こすことがあります。3大合併症と呼ばれる「糖尿病網膜症」「糖尿病関連腎臓病」「糖尿病神経障害」や、虚血性心疾患、脳血管障害、末梢動脈疾患のほか、肺炎や結核などの呼吸器系、膀胱炎、歯周病、認知症なども引き起こす場合があります。
定期的な検査と血糖コントロールの必要性
早期発見により速やかに治療することが大切です。
定期的に病院を受診して検査することをお勧めします。40歳以上の方、肥満体型の方、若い頃と比べて5kg以上体重が増えた方、食生活に問題がある方、高血圧を患っている方は、糖尿病にかかるリスクが高いとされています。特に年齢については、誰でも歳を取るため、加齢はすべての人が抱える糖尿病のリスクであると言えます。
糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本であり、それでも改善しない場合に薬物療法を併用します。血糖値と尿糖はきれいに相関しており、日常生活の振り返りとして、尿糖自己測定の有用性も示されています。尿糖を出さないことが、血糖コントロールのチェック、目標になると考えられます。
出典アナムネ「糖尿病の検査は何科で受けられる?検査方法や自宅でできるセルフチェックを紹介」より参照 作成
まとめ・・・尿の変化を見逃さず早めの受診を
糖尿病の初期症状として現れる尿の変化は、身体が発する重要なサインです。
甘いにおい、多尿、尿の泡立ちなど、いつもと違う変化を感じたら、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。尿検査や血液検査を組み合わせることで、糖尿病の早期発見と適切な治療につなげることができます。
糖尿病は自覚症状に乏しく、気づかないうちに進行する疾患です。しかし、早期に発見し、適切な血糖コントロールを行うことで、合併症の発症を予防し、健康な生活を維持することが可能です。定期的な検査を受け、尿の状態を日常的に観察することで、身体の変化に早く気付けるようになります。
当院では、泌尿器科専門医として、排尿に関するお悩みに幅広く対応しております。頻尿や尿漏れといった症状は、生活習慣や日頃のストレスからも影響を受けますので、さまざまな視点から治療に取り組むことが必要です。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
詳しい診療内容や検査については、皆川クリニックの公式サイトをご覧ください。人の心に寄り添うことができるクリニックを目指し、スタッフ一同でお待ちしております。
著者情報
皆川真吾
医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医
泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医
CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター
埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。
Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/
詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

