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間質性膀胱炎・膀胱痛症候群とは?「検査で異常なし」と言われた頻尿・膀胱の痛み
頻尿や膀胱の痛みで受診したのに、「尿検査では異常がありません」と言われた経験はありませんか?
抗生剤を処方されても症状が改善せず、何度も同じ症状を繰り返す。トイレに行く回数が日に日に増えていき、日常生活に支障をきたしている。そんな方は、もしかしたら「間質性膀胱炎」や「膀胱痛症候群」かもしれません。
これらの疾患は、一般的な膀胱炎とは全く異なる病態です。尿検査で異常が見つからないため、診断が遅れたり、精神的なものと誤解されたりすることも少なくありません。しかし、適切な診断と治療により、症状の改善が期待できる疾患でもあります。
この記事では、泌尿器科専門医の視点から、間質性膀胱炎と膀胱痛症候群の違い、症状、診断方法、治療法について詳しく解説します。

間質性膀胱炎と膀胱痛症候群の違い
間質性膀胱炎(IC)と膀胱痛症候群(BPS)は、しばしば同じ文脈で語られますが、実は異なる病態です。
間質性膀胱炎(IC)とは
間質性膀胱炎は、膀胱粘膜および粘膜下(間質)の慢性的な炎症により、さまざまな症状を呈する疾患です。特徴的なのは、膀胱鏡検査で「ハンナ病変」と呼ばれる特異的な所見が確認できる点です。
ハンナ病変は、膀胱粘膜の発赤や潰瘍として観察され、これが確認されれば間質性膀胱炎と診断されます。最近の研究では、ハンナ病変を伴う間質性膀胱炎は、免疫に関わる細胞(リンパ球など)が膀胱に集まって強い炎症を起こしている、明確な炎症性の病気であることが明らかになっています。
膀胱痛症候群(BPS)とは
一方、膀胱痛症候群は、膀胱に関連していると思われる痛みや不快感があるものの、膀胱鏡検査でハンナ病変が確認できない状態を指します。
組織学的変化はほとんどなく、全身神経生理学的・内分泌異常に潜在的に関連している可能性が示唆されています。つまり、ハンナ病変の有無が、間質性膀胱炎と膀胱痛症候群を区別する重要な指標となるのです。
男女比は1対9で圧倒的に女性に多く、日本ではようやく認知される様になってきた疾患です。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の主な症状
これらの疾患の症状は、一般的な膀胱炎や過活動膀胱と似ていますが、いくつかの特徴的な点があります。
頻尿と尿意切迫感
最も顕著な症状は頻尿です。軽症の場合でも1日に20回以上トイレに行くことがあり、重症例では30回以上になることも珍しくありません。
痛みを感じる前に早めにトイレに行っている方も多く、常にトイレのことが気になって日常生活に支障をきたします。夜間も何度もトイレに起きるため、睡眠不足に陥ることもあります。
膀胱の痛みと不快感
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の特徴的な症状は、尿がたまった時の膀胱の痛みです。これは排尿時の痛みではなく、蓄尿時痛と呼ばれるものです。 一般的な細菌性の膀胱炎が「排尿の終わり頃にツーンと痛む(排尿時痛)」のに対し、間質性膀胱炎では「尿が溜まると痛みや不快感が増し、排尿して空っぽになるとスッと楽になる」のが典型的なパターンです。
痛みは比較的鋭く、膀胱や尿道を中心に感じられます。排尿すると痛みが和らぐため、頻繁にトイレに行くようになります。痛みが起こる部位としては、下腹部、骨盤内、尿道の出口付近などが挙げられます。
その他の症状
以下のような症状も見られることがあります。
- 排尿してもすぐにまたトイレに行きたくなる残尿感
- 排尿時や排尿後の下腹部や尿道の痛み
- 性交時の痛み
- ストレスや緊張による症状の悪化
- ストレス、生理周期(月経前など)
- 特定の食品(酸味の強い果物、コーヒー、香辛料、アルコールなど)の摂取後に症状が強くなることがあります
症状がひどくなると、うつ状態になる患者さんもいると言われており、精神的な負担も大きい疾患です。

診断が難しい理由と診断方法
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の診断が難しい理由は、尿検査で異常が見つからないことが多いためです。
一般的な膀胱炎との違い
細菌感染で起こる急性膀胱炎の場合、尿検査で細菌や白血球が検出されます。しかし、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群では、多くの場合、尿に異常がありません。
そのため、症状から急性膀胱炎と診断され、抗生剤を処方されることが少なくありません。一時的に症状が治まっても、しばらくするとまた同様の症状が起こり、尿に異常がないにも関わらず症状が治らないため、精神的なものが原因であると誤解されることもあります。
診断のステップ
適切な診断のためには、以下のステップが重要です。
問診と症状の評価
まず、症状と経過を十分にお聞きします。問診票に記入いただき、症状をスコア化することで診断の補助とします。排尿日記の調査も必須の検査となります。
他の疾患の除外
尿検査、尿細胞診検査、腹部超音波検査、尿流量検査と残尿測定検査などを行い、他の病気がないことを確認します。必要に応じて骨盤のMRI検査を行うこともあります。
膀胱鏡検査
診断には、膀胱鏡(内視鏡)の検査が重要です。膀胱内を監察すると粘膜に血管が増生していたり赤くただれたような部位を確認でき、特徴的なハンナ潰瘍を認める場合もあります。間質性膀胱炎の方は、検査の痛みを通常以上に感じることが多いため、局所麻酔を膀胱内に注入後に検査を行うこともあります。外来で検査することが難しい場合は、入院のうえ、麻酔をかけて、治療を兼ねた膀胱水圧拡張術を受けることをお勧めしています。
確定診断
膀胱水圧拡張術で膀胱粘膜からさみだれ状の出血を確認できれば、間質性膀胱炎と診断されます。ハンナ病変と呼ばれる特徴的な所見があれば、間質性膀胱炎(ハンナ型)が疑われます。
治療法と日常生活での対策
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群に対して治療を行えば、多くの患者さんで症状が改善し、日常生活への支障を減らすことができます。 症状が完全にゼロにならない場合もありますが、治療によって症状をコントロールし、ストレスなく過ごせる状態(寛解:かんかい)を維持することを目標にします。
保存的治療
食事療法
食事療法は重要な治療の一つです。ある種の食べ物をとることにより尿中に排出される物質などの関与が示唆されているためです。
以下のような食品を避けることにより症状が緩和することがあります。
- 刺激物: わさび、唐辛子、胡椒などの香辛料
- 酸味の強いもの: 柑橘類(レモン、みかん等)、酢、トマト
- カフェイン・アルコール: コーヒー、紅茶、赤ワイン
- その他: 熟成チーズ、炭酸飲料
- ※大豆製品について: 海外では制限されることがありますが、日本人の場合、豆腐や味噌などは問題ない方も多いため、ご自身の体調に合わせて調整してください。
水分を十分取って尿を薄めることも重要です。
生活習慣の改善
ストレスの軽減と、緊張した骨盤底筋をリラックスさせるストレッチを行うと、症状の軽減に役立つことがあります。 一般的な尿漏れ予防の体操(ケーゲル体操など、尿道をギュッと締める運動)は、筋肉の緊張を高めて逆効果になることがあるため、自己判断で行わないよう注意が必要です。
痛みが強くないときには膀胱トレーニングも有効です。起きている間は決まったスケジュールに従って排尿する方法ですが、無理な我慢は禁物です。痛みを感じない範囲で、2〜3時間毎に排尿し、その他の時間はリラックスや深呼吸などにより尿意を我慢するスケジュールを確立します。尿意をうまく我慢できるようになったら、排尿の間隔を少しずつ伸ばしていきます。
薬物療法
痛みを軽減するため、必要に応じて鎮痛薬を使用します。また、痛みと膀胱の緊張を軽減するには抗うつ薬が、尿意切迫を和らげるには抗ヒスタミン薬や漢方薬が役立つことがあります。
近年、日本でも「DMSO(ジメチルスルホキシド)」という薬剤を膀胱内に注入する治療法が保険適用となり、高い効果が期待されています。
外科的治療
膀胱水圧拡張術
膀胱水圧拡張術は、間質性膀胱炎の診断の確定と治療が同時にできる方法です。ただし、治療効果は数カ月しかありませんので、診断が確定したら食事面を含めた日常生活の注意をすることが重要になってきます。
この治療は、厚生労働省による認可を受けた病院しか実施することができません。
ハンナ型間質性膀胱炎手術
膀胱内に潰瘍がある重症の方は、潰瘍をレーザーや電気メスで焼くと、疼痛が劇的に改善します。水圧拡張術と同時に行う事もあります。
その他の治療法
ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を膀胱に注入する場合もあります。膀胱に注入した溶液は膀胱内で15分間とどめておき、それから排尿して除去します。これらの溶液により痛みや尿意切迫がときに軽減しますが、通常はこの治療を繰り返し行う必要があります。
他の治療法で効果が得られない場合は、膀胱を制御する神経の脊髄付近の部分(神経根)を刺激し、痛みや尿意切迫の軽減を試みることもあります。
出典洛和会音羽病院「間質性膀胱炎とは?」より作成

当院での診療について
皆川クリニックでは、頻尿や尿漏れといった排尿のお悩みに対応しております。
これらの症状は比較的若い年代を含めて多くの方が悩んでいる実情があります。排尿の症状は薬の内服で緩和することができますが、生活習慣や日頃のストレスからも影響を受けるため、さまざまな視点から治療に取り組んでいます。
専門的な診断と治療
従来のやや受診しにくいような泌尿器科のイメージを改善し、もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指しています。
薬の処方以外にも、難治性過活動膀胱に対して日帰りでのボトックス膀胱壁内注入療法や、最新のFotonaレーザーを用いた日帰りでの低侵襲レーザー治療なども積極的に取り入れております。
尿路結石症や前立腺肥大症などにおいて手術が必要な場合は、連携する総合病院での手術治療を行い、術後は当院でのフォローアップも可能です。
経験豊富な専門医による診療
院長は泌尿器科学会専門医・指導医、泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医の資格を保有しており、虎ノ門病院、聖路加国際病院など複数の医療機関での経験を持っています。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の診断と治療には専門的な知識と経験が必要です。「検査で異常なし」と言われても症状が続く場合は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群は、尿検査で異常が見つからないため診断が難しい疾患ですが、適切な診断と治療により症状の改善が期待できます。
ハンナ病変の有無が間質性膀胱炎と膀胱痛症候群を区別する重要な指標となり、それぞれに適した治療法があります。頻尿や膀胱の痛みで悩んでいる方、何度も膀胱炎を繰り返している方は、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の可能性も考えられます。
治療には食事療法、生活習慣の改善、薬物療法、外科的治療など、さまざまな選択肢があります。症状に応じて最適な治療法を選択することが重要です。
我慢すること無く、ぜひ一度専門医にご相談ください。人の心に寄り添うことができるクリニックとして、スタッフ一同で皆さまの健康をサポートいたします。
詳しい診療内容やアクセス方法については、皆川クリニックの公式サイトをご覧ください。
著者情報
皆川真吾
医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医
泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医
CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター
埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。
Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/
詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

