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GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)の症状チェックと治療法〜膣の乾燥・痛みでお悩みの方へ

GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)とは?

「最近、デリケートゾーンの乾燥が気になる」「性交時に痛みを感じるようになった」「トイレが近くなった気がする」「膀胱炎を繰り返すようになった」・・・こうした症状に心当たりはありませんか?

実は、これらの症状は「GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)」と呼ばれる閉経関連泌尿生殖器症候群の可能性があります。GSMは、閉経に伴う女性ホルモンの低下によって、膣や外陰部、尿路に生じるさまざまな不調の総称です。以前は「萎縮性膣炎」や「老人性膣炎」などと呼ばれていましたが、症状が膣だけでなく尿路にも及ぶことから、2014年に国際女性性機能学会と北米更年期学会により、より包括的な「GSM」という名称が提唱されました。

閉経後の女性の約50〜70%が程度の差はあれGSMの症状を経験していると報告されており、決して珍しいことではありません。しかし、恥ずかしさや「年のせいだから仕方ない」という思いから受診せず放置されがちで、実際には十分に診断・治療されていないのが現状です。適切な治療により症状は改善できますので、まずはGSMについて正しく理解することが大切です。

GSMの主な症状〜セルフチェックリスト

GSMでは、膣や外陰部、尿路にさまざまな不調が現れます。

以下のチェックリストで、ご自身の症状を確認してみましょう。

性器(膣や外陰部)に関する症状

  • 膣の乾燥感やヒリヒリする感じがある
  • 外陰部にかゆみや灼熱感がある
  • いやなにおいのおりものが気になる
  • 膣内から微量の出血がある
  • 外陰部に痛みや違和感がある

性交に関する症状

  • 性交時に痛みを感じる
  • 潤いが不足していると感じる
  • 性感が減弱したと感じる
  • 性交後に出血することがある

排尿に関する症状

  • トイレが近い(頻尿)
  • 夜中に何度もトイレに行きたくて起きる
  • 尿もれがある
  • 排尿時に違和感や痛みがある
  • 膀胱炎を繰り返している
  • 残尿感がある

これらの症状のうち、いくつか当てはまるものがあった方は、GSMの可能性があります。特に出血のある方は、GSMの可能性もありますが、まずはがん検診をはじめとした精査が必要ですので、すぐに受診してください。

日本人女性を対象とした大規模調査では、いずれかの症状を訴えた女性は約45%に上り、女性のヘルスケアの観点からも看過できない問題であることが明らかになっています。特に尿路症状や性交症状は、性器症状よりも頻度が高いという実態が浮かび上がっています。

GSMの原因〜なぜ閉経後に起こるのか

GSMの最大の原因は、閉経に伴う女性ホルモン「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の急激な減少です。

エストロゲンの役割と閉経による変化

エストロゲンは女性の体を若々しく保つ重要なホルモンで、月経周期の調節だけでなく、膣や外陰部、尿道や膀胱の粘膜を健康に維持する役割を担っています。日本人女性の平均的な閉経年齢は50歳前後ですが、閉経が近づくと卵巣から分泌されるエストロゲンが急激に減少します。そのため閉経によってエストロゲンが欠乏すると、これら尿路生殖器に次第に変化が起こるのです。

エストロゲン低下による代表的な変化は、膣粘膜の菲薄化(ひはくか)と乾燥です。膣の粘膜は厚みと弾力を失い、粘液の分泌が減って潤いが少なくなります。また膣内の自浄作用を担う乳酸菌(ラクトバチラス)などの善玉菌が減少し、膣のpHは酸性(正常)から中性〜アルカリ性に傾きます。その結果、膣粘膜は防御機能が低下して炎症を起こしやすくなり、ヒリヒリしたりかゆみを感じたりするようになります。

尿路への影響

同時に、尿道や膀胱周辺の組織も萎縮し弱くなります。尿道粘膜が薄くなることで尿道括約筋の機能が低下し、咳やくしゃみで尿が漏れやすくなったり、膀胱を支える骨盤底の組織が衰えることで膀胱が下がり頻尿や残尿感が生じることもあります。つまり閉経によるホルモン低下がGSMの諸症状の根本原因なのです。

症状の進行性

GSMの症状は閉経後徐々に進行する傾向があります。ホットフラッシュ(ほてり)などの更年期症状は次第に落ち着いていくのに対し、GSMの症状は放置すると自然には改善せずむしろ悪化しやすいことがわかっています。ある研究では閉経1年後の女性の65%にGSM症状がみられたのに対し、閉経後6年では84%に増加していたとの報告があります。このように時間経過とともに症状が強まりやすく、性交渉や排尿など日常生活の質(QOL)に与える影響も大きくなるため、早めに対処することが大切です。

なお、GSMは主に閉経後に起こりますが、更年期以外でもエストロゲンが不足すれば同様の状態が生じます。たとえば、出産後や授乳中、乳がん治療、子宮筋腫や子宮内膜症などの偽閉経療法などのホルモン治療の間にもみられることがあります。

GSMの診断方法

GSMが疑われる場合、婦人科または泌尿器科を受診することをおすすめします。

医師による問診

まず、医師が詳しい問診を行います。症状の内容、発症時期、日常生活への影響などを丁寧にお聞きします。恥ずかしいと感じる方も多いかもしれませんが、専門医は日常的にこうした相談を受けていますので、安心してお話しください。

婦人科検診・超音波検査

膣や外陰部の状態を視診・触診で確認します。膣粘膜の萎縮や乾燥、炎症の有無などをチェックします。必要に応じて超音波検査を行い、子宮や卵巣の状態も確認します。特に出血がある場合は、がん検診をはじめとした精査が必要です。

ホルモン値の検査

血液検査でエストロゲンなどのホルモン値を測定することも必須ではありませんが、行うことがあります。閉経の状態や、ホルモン補充療法の適応を判断するために行われます。

GSMの治療法〜症状に合わせた選択肢

GSMの治療には様々な方法があります。症状の程度やご希望に応じて、適切な治療法を選択することができます。

ホルモン補充療法(HRT)

減少したエストロゲン(卵胞ホルモン)を補充する療法です。全身の更年期症状を含めてケアできるため、特にホットフラッシュのある方にはおすすめです。エストロゲンを内服などで全身的に補う治療法で、GSMに加え、更年期障害(ほてり、発汗、不眠など)にも効果があり、骨密度の低下を防ぐ効果があるほか、閉経後早期からの開始により血管の健康維持にも寄与するといわれています。ただし、不正出血、乳がん・子宮体がんなどのホルモン関連腫瘍のリスク、血栓症の可能性などのリスクがあるため、慎重な評価と定期的なフォローが必須です。

局所エストロゲン療法

膣内にエストロゲンを直接届ける治療(膣錠・膣クリームなど)です。膣粘膜に直接働きかけ、乾燥や痛みを緩和します。膣粘膜の厚みと潤いを回復し、性交痛や膀胱の違和感にも有効です。全身への影響が少なく、安全性が高いため、以前は通院での処置が主流でしたが、現在はご自宅で使用できる膣錠やクリームが処方され、通院頻度を抑えることが可能です。。

レーザー治療

膣内に照射し、コラーゲン生成を促すことで膣粘膜の状態を改善させます。ホルモン療法の効果が乏しい場合や、再発・再燃を繰り返す場合には、レーザー治療も勧められます。ホルモン治療もレーザー治療も、いずれも膣粘膜の改善が期待出来ます。。膣粘膜の改善は、膣内のpHの変化からラクトバチラスを再度定着させ、腟内細菌叢の改善に繋がります。特にレーザー治療はホルモン療法が難しい方や、より積極的なケアを望む方への選択肢となります。自費診療となりますが、膣粘膜の再生を促すことで長期的な改善を目指します。漢方治療

乾燥は水・血の不足からきているもの。体の中から潤いを取り戻す処方を考えます。ほかの治療と組み合わせることも可能です。

プラセンタ治療

更年期や老年期の諸症状の改善に効果が期待できます。ほかの治療と組み合わせることもありますが、あくまでも補助的な治療になります。

当院では、これらの治療法を患者さまの症状やご希望に応じて、適切にご提案しています。症状はしっかりと治療することで改善が期待できますので、「年齢のせい」とあきらめず、まずは専門医に相談してみましょう。

まとめ〜快適な日常を取り戻すために

GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)は、閉経に伴う女性ホルモンの低下によって起こる、膣や外陰部、尿路のさまざまな症状の総称です。

膣の乾燥感やかゆみ、性交痛、頻尿や尿漏れなど、日常生活の質(QOL)を大きく低下させる症状ですが、適切な治療により改善が期待できます。

閉経後の女性の約半数が経験するといわれるGSMは、決して珍しいことではありません。しかし、恥ずかしさや「年のせいだから仕方ない」という思いから、多くの方が我慢してしまっているのが現状です。

GSMの症状は進行性で、放置すると徐々に悪化してしまう傾向があります。早めに専門医に相談し、適切な治療を受けることで、快適な日常を取り戻すことができます。

当院では、ホルモン補充療法、局所エストロゲン療法、レーザー治療、漢方治療、プラセンタ治療など、患者さまの症状やご希望に応じた様々な治療法をご提案しています。もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

GSMでお悩みの方、症状が気になる方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。詳細はこちら:皆川クリニック

 

著者情報

皆川真吾

医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医

泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医

CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター

埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。

Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/

詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

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