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尿路結石の初期症状と再発予防策|食事・水分・生活習慣でできることの基本から応用まで
尿路結石とは何か〜激痛を伴う国民病の実態〜
尿路結石症は、男性の7人に1人、女性の15人に1人が一生のうちに経験するとされる「国民病」です。
腎臓で作られた尿が尿道から排出されるまでの通り道(腎臓・尿管・膀胱・尿道)を「尿路」といいます。この尿路に結石ができる病気が尿路結石症であり、結石が存在する場所によって腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼び名が変わります。上部尿路結石(腎結石・尿管結石)が全体の約96%を占めており、最も多いタイプです。
結石が腎臓にあるときは無症状な場合がほとんどですが、これが腎臓から流れ出て途中で尿管に詰まってしまうと、わき腹から背中、あるいは下腹部にかけての激しい痛み、嘔吐、血尿などの症状が出現します。この痛みは「世界三大激痛」とも言われるほど強烈なものです。

尿路結石の初期症状〜早期発見のサイン〜
尿路結石の症状は、結石の大きさや位置によって大きく異なります。
無症状から激痛まで〜症状の多様性〜
腎臓に小さな結石がある段階では、多くの場合無症状です。しかし、結石が腎臓から尿管へ落下すると、さまざまな症状が現れます。最も特徴的なのは、わき腹から背中にかけての激しい痛みです。この痛みは間欠的または持続的に生じ、我慢することが困難なほど強烈なケースも少なくありません。痛みは、結石がある場所が痛いのでは無く、尿管が詰まり尿が流れなくなることによって腎臓や尿管が張ってくることによる痛みです。結石が尿管内にあっても、尿が流れていると痛みを感じません。
痛みに加えて、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。さらに血尿、排尿痛、頻尿、残尿感といった排尿に関する症状も見られます。これらの症状が現れた場合は、夜間であっても救急病院を受診することをおすすめします。特に注意が必要なのは**『38度以上の発熱』を伴う場合です。 結石で尿が流れなくなった場所に細菌が感染すると『腎盂腎炎(じんうじんえん)』を起こし、細菌が全身に回る敗血症という命に関わる状態になることがあります。痛みだけでなく熱がある場合は、様子を見ずに直ちに救急医療機関を受診してください。
見逃しやすい初期サイン
激痛が起こる前の段階で気づける初期サインもあります。軽い腰痛や背中の違和感、排尿時のわずかな不快感などです。これらは日常的な疲労と混同されやすいため、見逃されがちです。しかし、こうした軽微な症状が続く場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
特に夏場など汗をかきやすい時期に発症しやすいという特徴があります。水分摂取量が少なくなり、尿が濃縮されることで結石ができやすくなるためです。

尿路結石の原因と発生メカニズム
尿路結石の発症には、食事や生活習慣が深く関わっています。
結石の成分と種類
尿路結石にはいくつかの種類があり、成分によって分類されます。最も多いのが「シュウ酸カルシウム結石」で、上部尿路結石では男女共にカルシウム結石の割合が90%以上を占めます。その他にリン酸カルシウム結石、尿酸結石、感染結石、シスチン結石などがあります。
尿中のシュウ酸、リン酸、カルシウム、尿酸などの物質が複雑に絡み合って結晶化し、それが集まることで結石が形成されます。尿中物質の過剰、結晶化を抑制する物質の減少、尿路の病気、ライフスタイルなど、多くの因子が複雑に関与しています。
生活習慣の欧米化との関係
近年、尿路結石の罹患率や再発率は上昇傾向にあります。この最大の原因は、生活習慣・食生活の欧米化によると考えられています。高たんぱく高脂肪の食事は、尿中のシュウ酸、尿酸などを増やし、結晶をできやすくします。
結石患者さんの特徴として、肥満傾向、運動不足、総タンパク質・動物性タンパク質・脂肪の摂取過多、カルシウムや牛乳摂取頻度の低下、野菜・海藻類の摂取頻度低下、甘味飲料・清涼飲料水の摂取頻度が高い、夕食中心の食生活、夕食から就寝までの時間が短いといった点が挙げられています。
実際、メタボリックシンドロームの患者に尿路結石症が多いという報告もあり、食事の欧米化と尿路結石には密接な関係があると考えられます。
再発予防のための食事戦略〜カルシウムとシュウ酸の関係〜
尿路結石は再発率が非常に高い疾患です。
5年以内に再発する確率は約45%にも上ります。そのため、治療だけでなく再発予防に努めることが極めて重要です。予防の中心となるのが食事療法であり、これはご自身でできる治療法でもあります。
カルシウムを積極的に摂取する理由
「シュウ酸カルシウム結石」という名前から、カルシウムの摂取を控えるべきだと誤解されることがあります。しかし実際には、適切にカルシウムを摂取することが尿路結石症の予防につながります。
カルシウムを多く摂取すると、腸内でシュウ酸とカルシウムが結合します。するとそのまま便として排泄されるので、シュウ酸もカルシウムも尿に運ばれなくなり、結石になりづらくなるのです。逆にカルシウム摂取量が少ないと、腸内でシュウ酸と結合できず、シュウ酸が血中へ吸収されて尿中に排泄されます。その結果、尿中でシュウ酸とカルシウムが結合し、結石が作られやすくなります。
1日600〜800mgのカルシウム摂取を目標に、食事ごとにカルシウムを意識して摂取することが再発予防に効果的です。
カルシウムを多く含む食品
牛乳やヨーグルトなどの乳製品は優れたカルシウム源です。普通牛乳はコップ1日1杯が目安ですが、ローファット牛乳は脂質が少なくカルシウムが多いため、コップ2杯でも問題ありません。ヨーグルトは100〜150gが目安で、加糖タイプの場合は糖分が多くなるので摂取量に注意しましょう。
チーズではカッテージチーズが食塩量も脂質も少ないのでおすすめです。サラダに振り掛けると気軽に食べることができます。プロセスチーズは食塩量が多いので食べ過ぎに注意しましょう。
大豆製品では、高野豆腐、がんもどき、生揚げ、木綿豆腐などがカルシウムを多く含みます。骨ごと食べる魚としてちりめんじゃこや小魚の南蛮漬けも効果的です。酢は体内でカルシウムの吸収を高める働きがあるため、南蛮漬けは特におすすめです。
野菜類では小松菜、モロヘイヤ、青梗菜、ひじきなどが挙げられます。その他、すりごま(硬い殻のままでは吸収が悪い)もカルシウム源として有効です。
シュウ酸の摂取に注意する
シュウ酸は様々な食品に含まれるため、完全に避けることは不可能です。そこで、特に多くシュウ酸を含む食品を控えめにすることがポイントです。
野菜類ではほうれん草が群を抜いて含有量が多く、100gあたり800mgものシュウ酸を含みます。一方、見た目が似ている小松菜はほうれん草の16分の1の50mgしか含まれていません。キャベツ、レタス、ブロッコリー、カリフラワーは300mg、ナスは200mg程度です。
お茶類では玉露が1350mg、煎茶・抹茶が1000mgと非常に多く、ほうじ茶は286mgと比較的少なくなっています。飲み物では、緑茶(特に玉露・抹茶)、紅茶、ウーロン茶、コーヒーに多く含まれています。一方、麦茶やほうじ茶は少ないので安心して飲むことができます。コーヒーや紅茶を好んで飲まれる方は、カルシウムを一緒に摂取するために牛乳を入れて飲むことがお勧めです。
シュウ酸は水溶性なので、野菜は茹でることで減らすことができます。食べる大きさに切ってからたっぷりのお湯で茹でると溶けだしやすくなります。「食べてはいけない」ではなく、「切ってからたっぷりの湯で茹でる」「食べる量や頻度を減らす」「カルシウムと一緒に食べる」ことが大切です。ただし、ゆで汁にはシュウ酸が多く含まれますので、飲まない方が無難です。

水分摂取と生活習慣の改善ポイント
食事と並んで重要なのが、水分摂取と日常の生活習慣です。
1日2リットル以上の水分摂取を目指す
水分摂取量が少ないと尿量も少なくなり、尿が濃くなります。するとカルシウムやシュウ酸などの結石生成物質の濃度が高くなり、結石ができやすくなります。1日の尿量が1000mL以下であると結石のリスクは高まり、2000mL以上になると低下するとされています。
飲んだ水分が全て尿として排泄されるわけではないので、食事以外に1日2000mL以上の水分摂取が望ましいとされています。2リットルよりも多く水を飲むように心がけると予防効果が高まりやすいでしょう。
ただし、腎臓病や心臓病をお持ちの方は、水分摂取量に注意が必要ですので、必ず主治医に確認してください。また、個人の体格や生活スタイル、住んでいる地域の水質や気候によっても必要水分摂取量は異なります。
飲み物の選び方
飲料であれば何を飲んでも良いわけではないという点に十分注意してください。前述の通り、コーヒー、ウーロン茶、紅茶、緑茶、ビールなどにはシュウ酸が多く含まれています。ビールはプリン体が多いだけでなく、アルコール全般に利尿作用があり、飲んだ量以上の水分が尿として排出されてしまいます。その結果、体は脱水状態になり尿が濃くなるため、結石ができやすくなります。お酒を飲む際は、同量の水を飲む(チェイサー)ようにしましょう。
砂糖入りの清涼飲料水も結石のリスクを増大させると言われています。海外の研究では、1日1本以上コーラを飲む人では23〜33%腎結石の発症リスクが高かったという報告もあります。
水分補給には水やお茶が適しています。特に麦茶やほうじ茶はシュウ酸が少ないため、積極的に摂取しても問題ありません。味がない水を飲むのが苦手な方は、麦茶やほうじ茶を選ぶとよいでしょう。
クエン酸の積極的な摂取
クエン酸は尿中でシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムの結晶化を抑制する働きがあります。さらに尿のアルカリ化を促進して酸性尿を改善し、尿酸結石やシスチン結石ができるのを防ぐ効果もあります。
みかん、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類や、酢、梅干しなど酸味のある食物に多く含まれます。ただし、果物はシュウ酸含有量が多い傾向にあるため、食べ過ぎにも注意が必要です。クエン酸入りの清涼飲料水も多く販売されていますが、糖分の過剰摂取とならないようにしましょう。
その他の生活習慣改善ポイント
塩分を控えることで尿中のカルシウム排泄量が減少し、尿路結石症の予防につながります。また、高血圧や腎機能障害のリスク軽減にも寄与し、メタボリックシンドロームの予防にも効果があります。
動物性たんぱく質や動物性脂肪を過剰に摂取すると、尿中のシュウ酸排泄量が増加し、尿路結石症のリスクが高まります。完全に避ける必要はありませんが、摂取量を適切に管理することが重要です。
1日3食、バランスのよい食事をとることを心がけ、欠食、食べ過ぎを避けます。夕食は就寝の4時間前までに終わらせましょう。結石を作る物質の尿中濃度は、食後2〜4時間に高くなるので、夕食後すぐに就寝することは避けます。
適度な運動も重要です。運動不足は結石のリスク因子の一つです。小さな結石がある場合、縄跳びなどで体を動かす運動を行ったり、なるべく歩くよう心がけることで、結石の自然排出を促すことができます。

まとめ〜日常からできる尿路結石予防〜
尿路結石は激しい痛みを伴う疾患ですが、日常の食事や生活習慣の改善によって予防・再発防止が可能です。
最も重要なポイントは、カルシウムを積極的に摂取すること、シュウ酸の多い食品を控えめにすること、1日2リットル以上の水分を摂取すること、そしてバランスの取れた食生活を心がけることです。特にカルシウムについては、腸内でシュウ酸と結合させて便として排泄させる重要な役割があるため、決して控えるべきではありません。
水分摂取では、麦茶やほうじ茶など、シュウ酸の少ない飲み物を選ぶことが大切です。コーヒーや紅茶、清涼飲料水は控えめにしましょう。コーヒーや紅茶にはミルクを入れて飲むことがお勧めです。クエン酸を含む柑橘類や酢、梅干しも結石予防に有効です。
生活習慣では、塩分や動物性たんぱく質・脂肪の過剰摂取を避け、適度な運動を心がけ、夕食後すぐに就寝しないことが重要です。これらの予防策は、尿路結石だけでなく、メタボリックシンドロームや生活習慣病の予防にもつながります。
尿路結石は再発率の高い疾患ですが、正しい知識と日々の実践によって、そのリスクを大幅に減らすことができます。わき腹や背中の痛み、血尿などの症状が現れた場合は、我慢せずに早めに医療機関を受診することをおすすめします。また、一度結石の症状を起こしたり治療歴のある方は、半年から1年に1回程度、尿検査・エコー検査・レントゲン検査などを定期的に行っていくことがお勧めです。
皆川クリニックでは、泌尿器科専門医として尿路結石症の診断・治療・予防指導を行っております。排尿のお悩みや尿路結石の不安がある方は、お気軽にご相談ください。連携する総合病院での手術治療が必要な場合も、術後のフォローアップまで一貫してサポートいたします。
詳しい診療内容や予防方法については、皆川クリニックの公式サイトをご覧ください。
著者情報
皆川真吾
医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医
泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医
CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター
埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。
Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/
詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

