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前立腺肥大症と排尿トラブル|早期発見がカギとなる理由と対策法

前立腺肥大症とは何か

前立腺肥大症は、中高年男性にとって非常に身近な疾患です。

前立腺は膀胱の下に位置し、尿道を取り囲むように存在する男性特有の臓器で、通常はクルミ程度の大きさをしています。この前立腺が加齢とともに徐々に大きくなることで、尿道が圧迫され、さまざまな排尿トラブルが引き起こされる状態を「前立腺肥大症」と呼びます。

50歳以上の男性の約半数、70代では約8割の方に前立腺の肥大が見られるとされており、決して珍しい病気ではありません。60歳以上の男性の約37%が前立腺肥大症による何らかの排尿トラブルを抱えているという調査結果もあります。

前立腺が肥大する主な原因は、加齢に伴うホルモンバランスの変化と考えられています。男性ホルモンであるテストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、前立腺組織を刺激することで肥大が進行します。また、肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病との関連も指摘されています。

前立腺肥大症による排尿障害の症状

前立腺肥大症による排尿障害は、「排尿症状」と「蓄尿症状」の二つに大きく分類されます。

排尿症状(尿が出にくい症状)

排尿症状は、尿道が圧迫されることで尿の流れが妨げられて起こる症状です。

  • 尿勢低下・・・尿の勢いが弱くなり、尿線が細くなります。若い頃は勢いよく飛んでいた尿が、足元に落ちるようになったと感じる方も多いです。
  • 排尿遅延・・・トイレに立っても、すぐに尿が出ず、しばらく待たなければならないことがあります。
  • 腹圧排尿・・・自然に尿が出なくなり、お腹に力を入れないと排尿できなくなることがあります。
  • 尿線途絶・・・排尿中に尿の流れが途切れ、再び力まないと出なくなることがあります。
  • 残尿感・・・排尿後も膀胱に尿が残っているような感覚があります。

蓄尿症状(頻繁に尿意を感じる症状)

蓄尿症状は、膀胱容量の減少や膀胱の過敏化により、少量の尿でも尿意を感じやすくなることで起こります。

  • 頻尿・・・一般的には1日中に8回以上、または夜間に2回以上トイレに行く状態を指します。
  • 夜間頻尿・・・夜間に何度も起きて排尿しに行くことで、睡眠の質が低下し、日中の活動にも影響を与えます。
  • 尿意切迫感・・・突然、我慢できないような強い尿意に襲われることがあります。
  • 切迫性尿失禁・・・尿意切迫感があまりにも強く、トイレに間に合わず尿が漏れてしまうことがあります。

これらの症状は個人差があり、すべての症状が現れるわけではありません。また、症状の重症度も人によって異なります。国際前立腺症状スコア(IPSS)というアンケートを用いて、症状の程度を数値化することで、適切な治療方針を決定する目安にしています。

早期発見がカギとなる理由

前立腺肥大症は進行性の病気です。

治療を怠ることで前立腺の肥大が徐々に進み、症状も悪化していきます。早期に発見し、適切な治療を開始することで、症状の進行を効果的に予防できる点が、早期発見の最大のメリットです。

早期発見・早期治療により、症状の進行を抑制し、手術などの侵襲的な治療を回避できる可能性が高まります。また、定期的な検診により、前立腺がんなどの重大な疾患を早期に発見できる可能性も高まります。前立腺肥大症と前立腺がんは別の疾患ですが、同時に発症することもあるため、注意が必要です。

放置することで起こるリスク

前立腺肥大症を放置すると、以下のような合併症が引き起こされる可能性があります。

  • 膀胱結石・・・膀胱に残された尿によって結石が形成されることがあります。
  • 尿路感染症・・・残尿が細菌の温床となり、感染症を引き起こすことがあります。
  • 尿閉・・・尿意があっても尿が出なくなる危険な状態に陥ることがあります。尿閉は緊急の状態であり、早急な医療の対応が必要です。
  • 腎機能障害・・・尿が腎臓から膀胱に流れにくくなることで水腎症を合併し、腎機能が低下することがあります。

これらの合併症は、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、精神的な負担にもなります。外出時に常にトイレの場所を気にしなければならず、社会活動の制限につながることもあります。

前立腺肥大症の検査と診断

前立腺肥大症の診断には、いくつかの検査が行われます。

問診と症状スコア評価

最初に問診が行われます。医師は患者の症状の程度や生活への影響を評価するため、国際前立腺症状スコア(IPSS)や過活動膀胱スコア(OABSS)という評価表を用います。これにより、症状の重症度を客観的に評価することが可能です。

直腸診(DRE)

直腸診は、以前は前立腺の大きさや硬さ、表面の性状を直接確認する検査とされていましたが、近年では精度の低さ、患者さんの羞恥心や痛みなどから行わなくなりました。採血によるPSAの測定を行い、異常値の場合はMRI検査を行って、癌を疑う所見を認める場合に前立腺生検を行う、という流れが一般的です。近年は、PSA以外にも、S2・3PSAやプロステートヘルスインデックス(PHI)も前立腺癌リスクの指標として運用されるようになってきました。

PSA検査

PSA検査は一般的に普及している検査の一つです。血液検査により前立腺特異抗原(PSA)の値を測定することで、前立腺の状態を評価します。この検査は前立腺がんのスクリーニングとしても重要な役割を果たします。年齢にもよりますが、一般的にPSA値が4.0ng/mlを超える場合、精密検査が推奨されます。

PSA値は前立腺肥大症でも軽度上昇することがあるため、泌尿器科で複数の検査を行って診断します。また、前立腺炎や前立腺マッサージ、カテーテル留置などによっても上昇することがあるので、その直後の検査は避けるのが望ましいです。

その他の検査

さらに、残尿量測定や尿流測定といった検査も必要に応じて実施されます。これらの検査により、排尿障害の程度を客観的に評価することができます。超音波検査を通して前立腺の大きさや形を調べることもあります。

前立腺肥大症の治療法

前立腺肥大症の治療方法には、薬物療法と手術療法があります。

前立腺の大きさや症状の程度に応じて、適切な治療法が選択されます。

薬物療法

まだ症状が比較的軽い段階では、薬物療法が選択されます。前立腺肥大症に対して用いられる薬には、効果の違いによっていくつかの種類があります。

  • α1受容体遮断薬・PDE5阻害薬・・・前立腺や膀胱、尿道といった排尿機能にまつわる器官の筋肉に生じている緊張を和らげる効果を持つ薬です。それにより排尿経路を圧迫から解放して尿を出しやすくします。比較的短期間で効果が現れやすい薬ですが、前立腺の肥大そのものは改善されません。PDE5阻害薬は膀胱や前立腺の血流を改善する効果があるため、膀胱機能の改善も期待出来ます。
  • 5α還元酵素阻害薬・・・男性ホルモンの働きを抑えることで、前立腺の肥大の進行を抑制したり、縮小させる効果があります。ただし、効果が現れるまでに数ヶ月かかることがあり、前立腺の形状や肥大の程度によっては効果が出にくいことがあります。

手術療法

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、尿閉などの重篤な合併症がある場合は、手術療法が検討されます。尿路結石症や前立腺肥大症などにおいて手術が必要な場合は、連携する総合病院での手術治療を行い、術後のフォローアップも可能です。

予防と生活習慣の改善

前立腺肥大症を予防するためには、生活習慣の見直しが大切です。

食生活の改善

バランスの取れた食事を心がけることが重要です。動物性脂肪の摂取を控え、野菜や果物を積極的に摂るようにしましょう。また、カルシウムの過剰摂取(1日に2,000mg以上)が前立腺がんのリスクを高めるという報告もあります。その他、亜鉛やビタミンEなども過剰摂取は癌のリスクを高める可能性も指摘されています。サプリメントを摂っている場合は、適量を守るようにしましょう。

適度な運動

適度な運動は、肥満の予防や血流の改善に役立ちます。有酸素運動や骨盤底筋のエクササイズなどが推奨されます。運動不足は前立腺肥大症のリスクを高める要因となる可能性があるため、日常的に体を動かす習慣をつけることが大切です。

禁煙

タバコは前立腺がんの最大のリスク因子であり、前立腺がんの38.8~45.3%は喫煙者です。禁煙することで、前立腺がんのリスクを低下させることができます。

ストレス管理

排尿の症状は薬の内服で緩和することができますが、生活習慣や日頃のストレスからも影響を受けますので、さまざまな視点から治療に取り組むことが必要です。ストレスを適切に管理し、リラックスする時間を持つことも大切です。

いつ医師に相談すべきか

排尿トラブルを感じた場合、いつ医師に相談すべきか迷う方も多いでしょう。

以下のような状況では、早めに泌尿器科を受診することをお勧めします。

  • 夜間に2回以上トイレに起きる
  • 排尿に時間がかかる、または排尿開始までに時間がかかる
  • 尿の勢いが明らかに弱くなった
  • 残尿感が頻繁にある
  • 腹圧をかけないと排尿できない
  • 突然の尿意を我慢できない
  • 日常生活や睡眠が排尿トラブルによって妨げられている

特に注意が必要な症状としては、急な排尿困難、血尿、発熱を伴う症状などが挙げられます。これらの症状が現れた場合は、定期検診の予定日に関わらず、速やかに医療機関を受診することが重要です。

頻尿や尿漏れといったトラブルは、実は比較的若い年代を含めて多くの方が悩んでいるのが実情です。相談するのが恥ずかしい、年のせいだからしかたがない、といったイメージをお持ちの方が多いと思いますが、我慢すること無く是非一度ご相談ください。

まとめ

前立腺肥大症は、中高年男性にとって非常に身近な疾患であり、早期発見・早期治療が重要です。

症状の進行を効果的に予防し、手術などの侵襲的な治療を回避できる可能性が高まります。また、定期的な検診により、前立腺がんなどの重大な疾患を早期に発見できる可能性も高まります。

排尿トラブルを感じたら、年のせいだと諦めずに、早めに泌尿器科を受診することが大切です。適切な治療を受けることで、生活の質を維持し、充実した毎日を送ることができます。

もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指しておりますので、不安や疑問がある場合は、まずは専門医に相談することをお勧めします。詳細はこちらをご覧ください。皆川クリニック

著者情報

皆川真吾

医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医

泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医

CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター

埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。

Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/

詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

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