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夜間頻尿の対策と改善方法〜睡眠の質を高める専門医のアドバイス

夜間頻尿とは?睡眠の質を低下させる厄介な症状

夜間、ぐっすり眠りたいのに何度もトイレに起きなければならない経験はありませんか?

夜間頻尿とは、夜間就寝中に1回以上排尿のために起きる症状を指します。国際禁制学会の定義によれば、「夜間就寝中に1回以上排尿に起きる状態」が夜間頻尿とされています。しかし、実際に治療が必要かどうかは、この症状が日常生活にどれだけ支障をきたしているかがポイントになります。

特に40歳以上になると約4,500万人の人が夜間1回以上、排尿のために起きるといわれています。年齢を重ねるほどその頻度は高くなり、80歳以上の男性では2回以上の人が約8割にも達するのです。

夜間頻尿は単なる不便さだけでなく、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。睡眠が断続的に中断されることで、睡眠の質が低下し、日中の疲労感や集中力の低下を引き起こします。

さらに、夜間頻尿のある人はない人に比べて、骨折による入院の割合がほぼ倍増するというデータもあります。夜中に暗い中でトイレに行く際に転倒するリスクが高まるためです。驚くべきことに、死亡率も2倍以上になるという研究結果も報告されています。

夜間頻尿の主な原因とメカニズム

夜間頻尿の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っています。主な原因を理解することで、効果的な対策を講じることができます。

夜間頻尿の原因は大きく分けて以下の3つのタイプに分類できます。

1. 夜間多尿型(尿量が多いタイプ)

夜間に作られる尿の量が多すぎることが原因です。特に男性の夜間頻尿の原因の約7割はこの「夜間多尿」によるものと言われています。1日の総尿量のうち、夜間尿量が33.3%以上になると夜間多尿と診断されます。

夜間多尿の主な原因には以下のようなものがあります:

  • 水分摂取のタイミングと量:就寝前の過剰な水分摂取
  • 利尿作用のある飲食物:カフェインやアルコールの摂取
  • 薬剤の影響:利尿剤やCa拮抗薬などの服用
  • 加齢:抗利尿ホルモンの日内変動が崩れ、夜間尿量が増える
  • 全身疾患:糖尿病、心不全、腎不全など

2. 膀胱蓄尿障害型(膀胱に尿をあまりためられないタイプ)

膀胱の容量が小さくなる、または膀胱が過敏になることで、少量の尿でも排尿したくなる状態です。膀胱容量が直接小さくなる場合と、膀胱容量は変わらず利用できる容量が小さくなる場合があります。

この型の主な原因には以下のようなものがあります:

  • 過活動膀胱:膀胱が過敏になり、少量の尿でも強い尿意を感じる
  • 前立腺肥大症:男性特有の疾患で、肥大した前立腺が膀胱や尿道を圧迫する
  • 膀胱炎:炎症による刺激で膀胱が過敏になる
  • 残尿:排尿後も膀胱内に尿が残り、機能的な膀胱容量が減少する

3. 睡眠障害型

睡眠の質が低下することで、軽い尿意でも目が覚めてしまう状態です。本来なら眠りが深ければ気にならない程度の尿意でも、睡眠が浅いと目覚めてしまいます。

睡眠障害型の主な原因には以下のようなものがあります:

  • 睡眠時無呼吸症候群:無呼吸による低酸素状態で交感神経が優位になり眠りが浅くなることや、心臓への負荷により夜間尿量が増加する
  • 不眠症:眠りが浅くなることで、軽い尿意でも目覚めてしまう
  • 就寝時刻の問題:最適な就寝時刻より早く寝ることで睡眠の質が低下する
  • ストレス:精神的な緊張が睡眠の質を低下させる

多くの場合、これらの要因が複合的に関わっているため、総合的なアプローチが必要になります。

夜間頻尿が生活に与える影響と健康リスク

夜間頻尿は単なる不便さだけでなく、生活の質や健康に深刻な影響を及ぼします。

まず最も直接的な影響は、睡眠の質の低下です。特に重要なのは、就寝から最初の排尿までの時間です。睡眠には約90分周期のサイクルがあり、最初の3時間が最も深い良質な睡眠が得られる時間帯です。この時間帯に排尿で起きてしまうと、睡眠の質が大きく損なわれます。

夜間頻尿がもたらす健康リスクは想像以上に深刻です。

  • 転倒・骨折リスクの増加:夜間に暗い中でトイレに行く際の転倒リスクが高まります。データによれば、夜間頻尿のある人はない人に比べて骨折による入院の割合がほぼ倍増します。
  • 死亡率の上昇:驚くべきことに、夜間頻尿は死亡率も2倍以上に高めるという研究結果があります。
  • 日中のパフォーマンス低下:睡眠不足による日中の眠気や集中力低下、疲労感は、仕事や日常生活に支障をきたします。
  • うつ病リスクの増加:慢性的な睡眠不足はうつ病のリスクを高めます。
  • 要介護リスクの上昇:長期的には要介護となる率も高まります。

特に高齢者にとって、夜間頻尿は単なる不便さを超えた健康リスクとなります。そのため、適切な対策を講じることが非常に重要です。

あなたは夜間に何回トイレに起きていますか?1回でもストレスを感じるならば、しっかりと対策を考える必要があるかもしれません。

夜間頻尿の改善に効果的な生活習慣の見直し

夜間頻尿を改善するためには、まず生活習慣の見直しから始めましょう。薬物療法の前に試せる効果的な方法がいくつもあります。

水分摂取の工夫

水分摂取は夜間頻尿に大きく影響します。適切な水分摂取のポイントは以下の通りです:

  • 1日の適切な水分量:体重1kgあたり30~40mlが目安です。例えば体重50kgの人なら1日に1.5〜2リットルが適量です。ただし、食事の内容にもよりますが、食事からも500-1000mlの水分を摂取するため、飲み物としては1000~1500ml程度が適量となります。
  • 摂取タイミングの調整:朝の起床から昼過ぎまでにしっかり水分を摂り、夕食後は控えめにしましょう。
  • 就寝前の水分制限:就寝2〜3時間前からは水分摂取を控えることで、夜間の尿量を減らせます。

多くの方が「水分をたくさん摂るべき」と考えていますが、実は水分を多く摂取することで脳梗塞を予防できるというエビデンスはありません。もちろん熱中症予防などのために適切な水分は必要ですが、過剰摂取は避けるべきです。夜間頻尿を訴える患者さんの中には、内科で夜水分を取るようにと言われているので、寝る前に500ml〜1Lもの水分を取ったり、夜間起きるたびにコップ1杯の水を飲むようにしている方もいます。このような方は明らかに水分摂取量が多すぎるため、飲水を減らすことで夜間の尿回数は減少します。脱水にならないように飲むことは大切ですが、飲み過ぎている方が多いのが実際のところです。

食事と飲み物の選択

食事内容も夜間頻尿に影響します:

  • カフェイン・アルコールの制限:特に夕方以降のカフェインやアルコールは利尿作用があるため控えましょう。
  • 塩分摂取の制限:塩分の過剰摂取は結果的に喉の渇きを引き起こし、水分の過剰摂取に繋がります。
  • 夕食の時間:就寝直前の食事は避け、就寝3時間前までに済ませるのが理想的です。

睡眠環境の改善

良質な睡眠は夜間頻尿の改善に直結します:

  • 適切な就寝時刻:研究によれば、多くの高齢者は最適な就寝時刻より早く寝ている傾向があります。就寝時刻を少し遅らせることで、睡眠の質が向上し、夜間頻尿が改善する可能性があります。
  • 快適な寝室環境:温度、湿度、光、音などを調整し、睡眠の質を高めましょう。
  • 日光浴と運動:日中に日光を浴び、適度な運動をすることで、体内時計を整え、夜の良質な睡眠につながります。特に夕食前の日光浴は、睡眠のリズムを整えるメラトニンの分泌を促します。

私の臨床経験では、これらの生活習慣の見直しだけで夜間頻尿が大幅に改善する患者さんも少なくありません。特に水分摂取の摂取量やタイミングを調整するだけで、夜間の排尿回数が減ったという報告は多いです。

まずは1週間、これらの方法を試してみませんか?

夜間頻尿の原因を知るための「排尿日誌」の活用法

夜間頻尿の効果的な対策を立てるためには、まず自分の状態を正確に把握することが重要です。そのための最も有効なツールが「排尿日誌」です。

排尿日誌とは、就寝と起床の時刻、その日の排尿した時刻と量を記録する日誌のことです。これを付けることで、自分の排尿パターンや問題点が明確になります。

排尿日誌の付け方

  • 記録する項目:就寝時刻、起床時刻、排尿時刻、排尿量、水分摂取時刻と量
  • 記録期間:最低3日間(できれば連続した日)
  • 尿量の測定方法:目盛り付きの計量コップで測定するのが理想的ですが、ペットボトルなどを代用して「これくらいなら何ml」と把握しておく方法でも構いません

特に重要なのは、朝起きて最初の尿は夜間に作られた尿なので、就寝後の夜間尿量に合算することです。

排尿日誌から分かること

排尿日誌を分析することで、以下のような重要な情報が得られます:

  • 夜間多尿の有無:1日の総尿量のうち、夜間尿量が33.3%以上であれば夜間多尿と診断できます
  • 1日の総尿量:多尿(1日の尿量が過剰)かどうかの判断材料になります
  • 機能的膀胱容量:1回の排尿量から膀胱にどれだけ尿を溜められるかが分かります
  • 水分摂取パターン:水分摂取のタイミングと量が適切かどうか評価できます

私の診療では、患者さんに排尿日誌をつけていただくことで、夜間頻尿の原因がより明確になり、効果的な治療計画を立てることができています。

ある70代の男性患者さんは、排尿日誌をつけることで、夕食後に大量の水分を摂取していることが夜間頻尿の主な原因だと分かりました。水分摂取のタイミングを調整するだけで、夜間の排尿回数が4回から2回に減少したのです。

自分自身の排尿パターンを知ることは、夜間頻尿改善の第一歩です。まずは3日間、排尿日誌をつけてみてはいかがでしょうか?

夜間頻尿のタイプ別対策と治療法

夜間頻尿は原因によって対策方法が異なります。排尿日誌などから判明したタイプに合わせた対策を講じることが効果的です。

夜間多尿型の対策

夜間の尿量が多いタイプには、以下の対策が効果的です:

  • 水分摂取の調整:前述の通り、就寝2〜3時間前からの水分制限が基本です
  • 利尿剤の服用タイミング変更:利尿剤を服用している場合は、朝に服用するよう医師と相談しましょう
  • 下肢のむくみ対策:日中に足にたまった水分が夜間に排出されることがあるため、日中の適度な運動や就寝前の足上げなどが効果的です
  • 薬物療法:必要に応じて抗利尿ホルモン製剤(デスモプレシン)などが処方されることもあります

膀胱容量減少型の対策

膀胱に尿をあまりためられないタイプには、以下の対策が有効です:

  • 骨盤底筋トレーニング:膀胱を支える筋肉を鍛えることで、尿意を我慢する力が強化されます
  • 膀胱訓練:尿意を感じても少し我慢することで、徐々に膀胱の容量を増やす訓練です
  • 薬物療法:過活動膀胱には主にβ3作動薬などが処方されることがあります
  • 前立腺肥大症の治療:男性の場合、α1ブロッカーや5α還元酵素阻害薬などの薬物療法、または手術療法が検討されます

当院では、難治性の過活動膀胱に対しては、ボトックス膀胱壁内注入療法も提供しています。これは保険適用の治療法で、日帰りでの手術が可能です。1回の投与で約6〜9ヶ月の治療効果が持続します。

睡眠障害型の対策

睡眠の質が低下しているタイプには、以下の対策が効果的です:

  • 就寝時刻の調整:研究によれば、適切な時刻に規則正しく就寝することで、「就寝から第一覚醒までの時間」が延長され、夜間頻尿が改善する可能性があります
  • 睡眠環境の改善:寝室の温度、湿度、光、音などを調整し、快適な睡眠環境を整えましょう
  • 睡眠時無呼吸症候群の治療:いびきや睡眠時無呼吸が疑われる場合は、専門医の診察を受けましょう
  • ストレス管理:リラクゼーション技法やマインドフルネスなどでストレスを軽減することも効果的です

当院では、いびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対して、Fotona社のレーザーを用いたナイトレーズ治療も提供しています。これは体へのダメージが少なく、日常生活への影響も少ない安全性の高い治療法です。

また、最新の磁気治療技術である「HITS™高密度テスラ磁気刺激システム」のスターフォーマーProも導入しており、骨盤底筋を鍛えることで尿失禁や夜間頻尿・過活動膀胱の改善に効果を発揮します。

夜間頻尿の改善には、原因に合わせた適切な対策が重要です。一人で悩まず、専門医に相談することをお勧めします。

専門医に相談すべきタイミングと受診のメリット

夜間頻尿は「年齢のせい」と諦めてしまう方が多いですが、適切な治療で改善できるケースが少なくありません。では、いつ専門医に相談すべきでしょうか?

専門医に相談すべきタイミング

  • 夜間の排尿回数が2回以上:特に睡眠の質や日常生活に影響がある場合
  • 急に夜間頻尿が始まった場合:急な症状の変化は何らかの疾患のサインかもしれません
  • 他の排尿症状を伴う場合:排尿時の痛み、血尿、残尿感、尿勢低下などがある場合
  • 生活習慣の改善を試みても効果がない場合:自己対策で改善しない場合は専門的な評価が必要です

専門医受診のメリット

専門医を受診することで、以下のようなメリットがあります:

  • 正確な診断:排尿日誌の分析や各種検査により、夜間頻尿の正確な原因を特定できます
  • 個別化された治療計画:あなたの症状や生活スタイルに合わせた最適な治療計画を提案します
  • 最新の治療法へのアクセス:一般的には知られていない最新の治療法を受けられる可能性があります
  • 合併症の早期発見:夜間頻尿の背景に潜む他の疾患を早期に発見できることもあります

私の診療経験では、「もっと早く相談すればよかった」とおっしゃる患者さんが非常に多いです。長年悩んでいた夜間頻尿が、適切な治療で数週間のうちに改善することも珍しくありません。

例えば、ある60代の男性患者さんは、10年以上夜間に3〜4回トイレに起きる生活を「年のせい」と諦めていました。しかし、前立腺肥大症と診断され適切な治療を始めたところ、夜間の排尿回数が1回に減少。「こんなに人生が変わるとは思わなかった」と喜ばれていました。

夜間頻尿で悩んでいるなら、一度専門医に相談してみることをお勧めします。適切な診断と治療で、あなたの睡眠の質と生活の質を大きく向上させることができるかもしれません。

まとめ:夜間頻尿を克服し良質な睡眠を取り戻すために

夜間頻尿は単なる不便さではなく、睡眠の質を低下させ、健康リスクを高める可能性のある症状です。しかし、適切な対策と治療で改善できることが多いのも事実です。

この記事でご紹介した主なポイントをまとめます:

  • 夜間頻尿の理解:夜間に1回以上トイレに起きる症状で、年齢とともに頻度が増加します
  • 主な原因:夜間多尿型、膀胱蓄尿障害型、睡眠障害型の3つのタイプがあり、それぞれ対策が異なります
  • 健康リスク:転倒・骨折リスクの増加、死亡率の上昇、日中のパフォーマンス低下など、様々な健康リスクがあります
  • 生活習慣の改善:水分摂取の工夫、食事と飲み物の選択、睡眠環境の改善などが効果的です
  • 排尿日誌の活用:自分の排尿パターンを把握し、効果的な対策を立てるために重要なツールです
  • タイプ別対策:原因に合わせた適切な対策を講じることが効果的です
  • 専門医への相談:夜間の排尿回数が2回以上の場合や、自己対策で改善しない場合は専門医に相談しましょう

夜間頻尿は「年齢のせい」と諦めるのではなく、積極的に対策を講じることが大切です。まずは生活習慣の見直しから始め、必要に応じて専門医に相談してください。

皆川クリニックでは、夜間頻尿をはじめとする排尿トラブルに対して、最新の治療法を提供しています。Fotona社のレーザー治療やスターフォーマーProによる磁気治療など、体への負担が少なく効果的な治療法も取り入れています。

ぐっすり眠れる夜を取り戻し、健康で活力ある毎日を送るためのお手伝いをさせていただきます。お悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

詳しくは皆川クリニックのホームページをご覧ください

著者情報

皆川真吾

(医学博士、泌尿器科学会専門医・指導医、CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター)

埼玉県出身。平成13年秋田大学医学部医学科卒業、平成17年秋田大学医学部医学研究科大学院卒業、医学博士号取得。虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院、東京腎泌尿器センター大和病院、行徳総合病院での勤務を経て、令和2年に皆川クリニックを開設。日本泌尿器科学会、日本泌尿器内視鏡学会、日本抗加齢医学会、泌尿器抗加齢医学研究会、GSM研究会、日本女性骨盤底医学会、日本メンズヘルス医学会、日本美容皮膚科学会に所属。

Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/

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