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いびき・睡眠時無呼吸と夜のトイレ回数|睡眠障害が尿トラブルを招く理由と治療法の基本から応用まで
夜中に何度もトイレに起きてしまう方へ
「最近、夜中に何度もトイレに起きてしまう」「朝までぐっすり眠れない」といったお悩みを抱えている方は少なくありません。実は、こうした夜間頻尿の背景には、いびきや睡眠時無呼吸症候群が隠れているケースが非常に多いのです。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの約3割に夜間頻尿が認められており、無呼吸が重症になるほど夜間頻尿の有病率が高くなることが報告されています。一見すると関係がなさそうな「呼吸」と「排尿」ですが、実は密接に結びついているのです。
この記事では、泌尿器科専門医の視点から、睡眠障害と夜間頻尿の関係について詳しく解説していきます。

睡眠時無呼吸症候群とは何か
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。10秒以上の呼吸停止状態を無呼吸として、無呼吸が1時間あたり5回以上、または1晩(7時間の睡眠中)に30回以上あれば睡眠時無呼吸症候群という診断になります。
肥満体型の方や、あごが小さい方に多くみられる傾向があります。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状
この病気になると、寝ている間に大きないびきをかいたり、寝相が悪くなって寝汗が増えることがあります。また、何度もトイレにいきたくなって目が覚めてしまう方もいます。起床時の疲れや頭痛、眠気で日中の仕事や勉強に集中できないということがある場合は、この病気の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放っておくと、不整脈や高血圧、糖尿病、脳梗塞などのリスクが高まることがわかっています。
また、睡眠時無呼吸症の影響による居眠り運転での交通事故も報告されており、見過ごせない疾患です。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法
治療は、睡眠中の呼吸をサポートする装置を使って行います。中でも代表的なものがCPAPです。ほかにも、患者さんの体調に応じて、マウスピースやASVと呼ばれる器具を使った治療も検討されます。
夜間頻尿とは何か
夜間頻尿とは、夜寝ついてから朝床を離れるまでに1回以上起きてトイレに行かなければならなくて困るという症状です。夜間の中途覚醒を引き起こすことから、生活の質に大きく影響すると言われています。
夜間頻尿は、夜間排尿の回数が増えるにつれ支障度が増加することが知られており、実際の臨床では夜間排尿2回以上がよく問題とされています。
夜間頻尿の実態
総人口の約3割に夜間頻尿の有病率があり、50歳以上の約50%、70歳以上では60-80%の有病率と報告されています。つまり、とても身近な症状なのです。性差では若年者では女性に多く、中高年では男性の方が多いと報告されています。
また、2回以上の夜間頻尿があると転倒や骨折のリスクが高くなり、死亡率が増加することが報告されており、注意が必要な症状でもあります。
夜間頻尿の主な原因
夜間頻尿の原因は、様々ありますが、主に「夜間多尿」「膀胱畜尿障害」「睡眠障害」の3つが知られています。
夜間多尿には、24時間尿量が多い多尿と夜間のみ尿量が多い夜間多尿があります。65歳を超える方では24時間の尿量のうち、夜間の尿量が33%を超える場合、若い成人の方では24時間の尿量のうち、夜間の尿量が20%を超える場合が夜間多尿と判断されます。
膀胱蓄尿障害は、膀胱容量自体が低下したり、尿を出し切れなくなったりすることで尿を十分に溜められなくなる障害です。過活動膀胱や前立腺肥大症などが代表的な原因となります。

睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿を引き起こすメカニズム
睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿の関係は、1989年に初めて報告されて以来、世界中で研究が進められてきました。2019年の中国の研究では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のある人の夜間頻尿の有病率は1.4倍高く、無呼吸が重症になる程に夜間頻尿の有病率が高くなることが示されています。
交感神経が優位になりやすい
呼吸が止まると、血液中の酸素濃度が低下し、血圧や心拍が上昇することになります。本来なら眠っている間は副交感神経が働いて尿意は感じにくく、膀胱はたくさんの尿を溜めることができるのですが、呼吸が止まって血圧や心拍の上昇で交感神経が働き、身体が起きている状態になり膀胱が収縮しやすく、尿意も感じてしまうのです。
利尿ホルモンが分泌される
睡眠中の無呼吸によって引き起こされる負の胸腔内圧変動が夜間頻尿を起こす原因とも考えられています。無呼吸時に胸腔内圧が低下し、静脈還流の増加となり、心臓に戻ってくる血液量と圧力が増加します。その心臓負荷により体液が多すぎると体が勘違いし、心房組織から心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が放出されます。
ANPは尿産生を増加させ、夜間頻尿の可能性を高めると考えられています。
睡眠障害との相互作用
夜間頻尿と睡眠障害は密接に関係しています。夜間に尿意を感じて起きてしまう、あるいは逆に夜間に起きてしまって尿意を感じるというように、夜間頻尿と睡眠障害は表裏一体の関係にあり、悪循環を招きかねません。
中途覚醒は膀胱内圧の上昇を生じ、膀胱容量低下をきたして尿意の原因となることが報告されています。
睡眠時無呼吸症候群の治療で夜間頻尿が改善する可能性
睡眠時無呼吸症候群の治療をして、睡眠時もしっかり呼吸し副交感神経を優位に保つことで、夜中のトイレに起きなくなったということはよくあります。夜間頻尿が治まると夜中に起きることがなくなり、睡眠の質が改善され、日中の活動の質も上がるということになり、良い循環が起こります。
適切な診断と治療の重要性
睡眠時無呼吸症候群の潜在的な患者数は日本でも300万人~400万人と言われており、放っておくと高血圧や心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などにつながるリスクがありますが、適切な診断と治療を行うことで様々なリスクから身体を守ることができます。
睡眠時無呼吸症候群が夜間頻尿の原因となることも多いので、いびきの症状がある方は一度検査をお勧めします。
切らない・痛みの少ない新しい治療「ナイトレーズ」
これまで、睡眠時無呼吸症候群やいびきの治療といえば、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)やマウスピースが主流でした。しかし、「装置をつけると眠れない」「出張や旅行に持っていくのが大変」「毎晩の装着が煩わしい」といった理由で、治療を断念してしまう方も少なくありません。
そこで当院では、新しい治療の選択肢として「ナイトレーズ(NightLase®)DUO」というレーザー治療を導入しています。
■ ナイトレーズDUOとは?
ナイトレーズDUOは、エルビウムヤグレーザーとネオジウムヤグレーザーの2つのレーザーによる治療です。のどの奥(口蓋垂や軟口蓋)にレーザーを照射し、粘膜の組織を引き締め、軟口蓋の脂肪組織を減少させる効果が期待出来ます。 レーザーの熱作用によってコラーゲン繊維の収縮と再生を促し、緩んでしまったのどの組織をギュッと引き締めます。これにより気道(空気の通り道)が広がり、いびきや無呼吸の改善が期待できます。
■ このような方におすすめです
- CPAPの装着感が苦手で続けられなかった方
- マウスピースの異物感が苦手な方
- 外科手術(メスで切る手術)には抵抗がある方
- いびきを改善して、旅行やパートナーとの睡眠を気兼ねなく楽しみたい方
■ 治療の特徴
- 痛みがほとんどない: 麻酔を使わなくても受けられる程度の温かい感覚です。
- ダウンタイムがない: 術後の出血や腫れはほとんどなく、治療直後から食事や会話が可能です。
- 日帰りで可能: 1回の治療時間は15〜20分程度です。
■ 夜間頻尿への効果
ナイトレーズによっていびきや無呼吸が改善され、睡眠の質が向上すれば、交感神経の興奮が抑えられます。その結果、本コラムのテーマである「夜間頻尿」の改善も十分に期待できます。
※ナイトレーズは公的医療保険が適用されない「自由診療(自費診療)」となります。 効果には個人差があり、症状の重さによっては複数回の照射が必要です(通常3〜4回ワンクールを推奨しています)。 重症の睡眠時無呼吸症候群の場合は、CPAP治療が第一選択となることがあります。医師が診察の上、最適な適応を判断いたします。
当院での診療について
当院では、頻尿や尿漏れといった排尿のお悩みに対応しています。これらの症状は比較的若い年代を含めて多くの方が悩んでいる実情があります。排尿の症状は薬の内服で緩和することができますが、生活習慣や日頃のストレスからも影響を受けるため、さまざまな視点から治療に取り組んでいます。
従来のやや受診しにくいような泌尿器科のイメージを改善し、もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指しています。
夜間頻尿を改善するための生活習慣
睡眠時無呼吸症候群の治療以外にも、夜
間頻尿を改善するために日常生活で気をつけるべきポイントがあります。
水分摂取のタイミングと量
夜間頻尿の80%の方は水分を過剰に摂取しています。水分摂取量が多ければ当然のことながら尿量が増えて排尿回数が増加します。特に寝る前に飲水量が多い方は、夜間多尿の原因となります。
脳梗塞予防や腎機能の保護目的などのために習慣的に就寝前に飲水をしている方もいますが、医学的根拠はなく、むしろ頻尿になることによる睡眠障害や夜間転倒のリスクが高まるため悪影響が大きいと言えます。適切な水分摂取量を心がけることが大切です。
塩分とカリウムの摂取
塩分の多い食事を摂ると、のどが渇いて飲水量が多くなり夜間の排尿量と排尿回数が多くなることがわかっています。また、カリウムはナトリウムを尿に排泄するために必要なミネラルで、野菜や果物などに多く含まれており利尿効果を高める働きがあります。そのため、夕食時の過度な果物の摂取や塩分は控えた方が良いでしょう。
アルコールとカフェインの影響
アルコールは抗利尿ホルモンの分泌を抑えてしまうため、多尿につながる場合があります。アルコールの利尿作用に加え、のどの筋肉が緩んでいびきや無呼吸が悪化し、結果として夜間頻尿を助長します。

専門医への相談が大切な理由
夜間頻尿は病名ではなく症状ですが、その裏には治療が必要な病気が隠れていることがあります。夜間頻尿を引き起こす疾患として、膀胱に尿が少量しか貯められなくなる膀胱畜尿障害を生じる疾患があります。また、睡眠障害やその他の循環器系の疾患が関わっている場合もあります。
睡眠時無呼吸症候群とは関連性のない夜間頻尿に対しては、難治性過活動膀胱に対しての日帰りでのボトックス膀胱壁内注入療法や、最新のFotonaレーザーを用いた日帰りでの低侵襲レーザー治療なども積極的に取り入れています。尿路結石症や前立腺肥大症などにおいて手術が必要な場合は連携する総合病院での手術治療を行い、術後は当院でのフォローアップも可能です。
我慢すること無く是非一度ご相談ください。人の心に寄り添うことができるクリニックになるよう、スタッフ一同努めてまいります。
まとめ
いびきや睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿は、一見関係がなさそうに思えますが、実は密接に関連しています。睡眠中の呼吸障害が交感神経を優位にし、利尿ホルモンの分泌を促すことで、夜間の尿量が増加してしまうのです。
夜間頻尿は生活の質を大きく低下させるだけでなく、転倒や骨折のリスクを高め、死亡率の増加にもつながる重要な症状です。年のせいだからしかたがないと諦めず、適切な診断と治療を受けることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群の治療により夜間頻尿が改善するケースも多く、睡眠の質の向上とともに日中の活動の質も向上します。いびきや夜間頻尿でお悩みの方は、ぜひ専門医にご相談ください。
詳しい診療内容や治療法については、皆川クリニックまでお気軽にお問い合わせください。もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指して、皆さまのお悩みに寄り添った医療を提供してまいります。
著者情報
皆川真吾
医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医
泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医
CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター
埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。
Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/
詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

