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PSA検査で前立腺がんを早期発見|何歳から受ける?泌尿器科専門医が解説を極める!

前立腺がんと早期発見の重要性

前立腺がんは、男性特有のがんの中で最も罹患率が高い疾患です。

2019年の全国がん登録によれば、年間約94,748人が前立腺がんと診断されており、男性のがんとして第一位となっています。この数字は今後も増加すると予測されており、10年後には肺がんに次いで死亡数でも上位になる可能性が指摘されています。

前立腺がんの特徴として、早期に発見できれば非常に良好な予後が期待できる点が挙げられます。前立腺に限局するステージⅠ・Ⅱでは5年生存率が100%、局所浸潤がんのステージⅢでも99.2%と極めて高い数値を示しています。しかし、リンパ節や骨に転移したステージⅣになると5年生存率は53.4%まで低下してしまいます。

このように、早期発見が患者さんの予後を大きく左右するため、適切なタイミングでの検査が極めて重要となります。

PSA検査とは何か

PSA検査の基本的な仕組み

「PSA検査」という言葉を耳にしたことはありますか?

PSAとは「前立腺特異抗原(Prostate Specific Antigen)」の略称で、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパク質です。通常は精液中に分泌され、精液のゲル化に関係していますが、ごく微量が血液中にも取り込まれます。前立腺がんの患者さんでは、正常な構造が壊れるため、血液中にPSAが漏れ出す量が多くなるため、血液検査で「PSAが高い」という結果が出るのです。

PSA検査は採血のみで実施できる簡単な検査であり、前立腺がんのスクリーニング検査として広く活用されています。スクリーニング検査とは、前立腺がんの可能性がある人を見つけるための検査のことを指します。

PSA検査の正常値と判定基準

PSAの正常値は全年齢で4.0ng/mL以下とされています。

ただし、PSA値は年齢によって上昇する傾向があるため、近年では年齢階層別の基準値が設けられています。50~64歳では3.0ng/mL以下、65~69歳では3.5ng/mL以下、70歳以上では4.0ng/mL以下が推奨される基準値です。

PSA値が基準値以上であっても、必ずしも前立腺がんと確定したわけではありません。前立腺肥大症や前立腺炎など、前立腺がん以外の疾患でも高値になることがあります。実際、PSA値が4~10ng/mLの間の患者さんでは、前立腺がんが見つかるケースは約2~3割程度です。しかし、20ng/mL以上になると半分以上で前立腺がんが見つかり、さらに値が高くなればなるほど前立腺がんの可能性は高くなります。

何歳からPSA検査を受けるべきか

推奨される検査開始年齢

50歳以上の男性で、まだ一度もPSA検査を受けていない方は、ぜひ一度検査を受けることをお勧めします。

前立腺がんは50歳代から罹患数が増加し始め、70歳代になると急激に増えてくる高齢者がんの一つです。しかし最近では発症年齢が下がる傾向が認められており、40歳代の患者さんも珍しくなくなってきました。このため、父・兄弟・子に前立腺がん患者がいる場合や、人間ドックを受診する機会がある方は、40歳からの定期検診が推奨されています。

定期検査の頻度

PSA検査は一度受ければ十分というわけではありません。

検査で異常がなくても、小さい前立腺がんが隠れている可能性や、将来前立腺がんへと進んでいく可能性もあります。早期発見のために、一度PSA検査を受けて基準値以下だった方も、その値に応じて定期的に受けることが推奨されています。

PSA値が1.0ng/mL以下の場合は3年に1度の検査、1.1ng/mLから基準値までの場合は1年に1度の検査、基準値以上の場合は専門医の受診が推奨されます。このように、PSA値に応じた適切な検査間隔を守ることが、早期発見につながります。

PSA検査で高値が出た場合の対応

泌尿器科で行う精密検査

PSAが高いと言われた場合、必ず泌尿器科を受診してください。

泌尿器科では、以前は直腸診が行われていましたが、現在は精度の低さや、痛み、羞恥心などの観点から積極的に行わなくなりました。一般的には最初に腹部超音波検査を実施します。前立腺肥大症の有無を調べる検査で、前立腺肥大症があればPSA値は高くなるため、必須の検査となります。また、尿検査で炎症や感染症が疑われる場合は、抗生剤で感染症の治療を行ってからPSAを再検します。前立腺の炎症でPSAが上昇している可能性があるためです。尿検査や超音波検査、自覚症状などから考慮し、必要性に応じて、MRI検査を行います。MRI検査で前立腺癌が疑われる場合は前立腺生検を行います。

PSAの「グレーゾーン」と最新の検査(F/T比・p2PSA)

PSA検査の結果が「4.0〜10.0ng/mL」の間だった場合、これを医学的に「グレーゾーン」と呼びます。 この数値帯では、約70〜80%の方が「前立腺肥大症」や「前立腺炎」などの良性疾患であり、実際にがんが見つかるのは20〜30%程度です。

しかし、以前はこのグレーゾーンの方全員に対して、確定診断のために「前立腺生検(針を刺す検査)」を行うことが一般的でした。その結果、多くの患者さんががんでなかったのに、入院検査が必要になった、という状況が生じていました。

そこで近年、本当に生検が必要な人」を見極めるための、より詳しい血液検査が採用されるようになっています。

  1. F/T比(フリー/トータル比) これは従来からある指標の一つです。PSAには、タンパク質とくっついている「結合型」と、くっついていない「遊離型(フリー)」があります。前立腺がんの場合、「フリーPSA」の割合が低くなるという特徴があります。これを利用して、PSA値全体に対するフリーPSAの割合(F/T比)を調べ、数値が低い場合はがんの疑いが強いと判断します。
  2. S2,3PSA(p2PSA)とPHI(ピー・エイチ・アイ) さらに近年登場したのが、PSAのさらに細かい成分を調べる検査です。 フリーPSAの中には、前立腺がんで特異的に高くなる「[-2]proPSA(p2PSA)」という成分(S2・S3結合が開裂せずに残存している前駆体に関連するもの)が含まれていることが分かりました。 この新しいマーカーを測定し、従来のPSA値と組み合わせて計算した「PHI(Prostate Health Index:前立腺健康指数)」を用いることで、グレーゾーンの中でも特にがんのリスクが高い人を、より高い精度で見つけ出せるようになりました。

これらの最新検査を組み合わせることで、不必要な生検(針を刺す検査)を回避できる可能性が高くなります。当院では、PSAがグレーゾーンの場合、すぐに生検をするのではなく、こうした精密検査やMRIを組み合わせて、本当に生検が必要かどうかを慎重に判断することも大切です。

前立腺生検について

前立腺がんの確定診断を行うには、前立腺生検が必要です。

前立腺生検は、実際に前立腺の組織を採取し、がん細胞があるかどうかを診断する検査です。MRI検査の結果、前立腺がんの疑いがある場合に実施されます。MRI検査は、がんの広がりを見るだけでなく、生検を行うべきかどうかの判断や、生検で狙う場所を決めるためにも非常に有用です。検査の方法は、以前は直腸の壁を通して針を刺す方法(経直腸的生検)が主流でしたが、現在は感染症のリスクを減らすため、股の皮膚から針を刺す方法(経会陰的生検)を行う施設が増えています。8~16本の組織を採取し、検査時間は10~15分程度、多くの施設では基本的に1泊2日の入院で行われます。

合併症としては、出血(肛門からの出血、血尿、精液に血が混じる)、尿閉(尿が出なくなる)、感染(細菌が前立腺に感染し急性細菌性前立腺炎を起こす)があります。特に感染症は発症頻度は低いものの重症化することもあるため、退院後1週間は自宅で定期的に体温を測定し、悪寒や発熱があった場合は検査を行った病院にすぐ連絡することが大切です。

PSA検査の利益と不利益

PSA検査を受けることの利益

PSA検査の最大の利益は、前立腺がんの早期発見です。

早期に診断できれば完治できる可能性が非常に高く、手術や内分泌療法など確立された治療法も存在します。米国では「50歳になれば、全員PSA検査を受けよう」という呼びかけの成果が形になって現れ、前立腺がんによる死亡が減少に転じています。

PSA検査の不利益と過剰診断の問題

一方で、PSA検査には不利益も存在します。

前立腺がんは一般的に進行が遅く、80歳代の約4割が前立腺がんを持っているものの、その半数は前立腺がんで亡くなることはないと言われています。つまり、発見や治療が不要なおとなしいがんも存在するのです。

PSA検査により、死に至らないがんまで見つかって治療を受けることになる過剰診断・過剰治療のリスクがあります。特に高齢者を対象にPSA検査を行い前立腺がんを発見できたとしても、治療そのものが体に負担をかけてしまい、治療行為により死期を早めてしまう危険性すらあると指摘されています。

また、PSA検査では基準値以上であっても前立腺がんが見つからない可能性もあり、反対に治療が必要ながんがあってもPSA検査では発見できない場合もあります。このため、PSA検査を受けるかどうかについては、検査の利益・不利益を理解した上で、各個人が判断する必要があります。

前立腺がんのリスク要因と予防

生活習慣とリスク要因

前立腺がんの発症には、環境因子が大きく関係していると考えられています。

動物性脂肪・植物油などの過剰摂取は前立腺がんの危険因子であり、食生活の欧米化が前立腺がん増加の主な理由の一つとされています。毎日脂っこい食品を食べて、発酵食品は取らず、日光に当たることなく一日中オフィスにいて仕事をしているという生活スタイルは、前立腺がんのリスクを高める可能性があります。

予防に役立つ食生活

逆に、前立腺がんの罹患が少ない国々では、がんの発症リスクを減らす作用が確認される食品を多く摂る傾向が認められています。

アジアでは味噌などの発酵ダイズ食品が多く、緑茶を良く飲む習慣があります。これらの食品はがん予防効果が動物実験や疫学的な検証によって認められています。がん予防効果が最も科学的に実証されているのはトマトであり、イタリアに患者が少ないことの一因である可能性があります。

また、日照時間が短いと前立腺がんを発症しやすいという現象も観察されており、日照によって皮膚で産生されるビタミンDのがん予防効果が関係している可能性が指摘されています。

皆川クリニックでの前立腺がん検査

皆川クリニックでは、泌尿器科専門医・指導医である院長が、PSA検査から精密検査まで一貫した診療を提供しています。生検の必要性があると判断した場合は、総合病院へご紹介いたします。

頻尿や尿漏れといった排尿のお悩みで受診される方が多いのですが、「相談するのが恥ずかしい」「年のせいだからしかたがない」といったイメージをお持ちの方も少なくありません。しかし、排尿の症状は薬の内服で緩和することができ、生活習慣や日頃のストレスからも影響を受けるため、さまざまな視点から治療に取り組むことが必要です。

当院では、従来のやや受診しにくいような泌尿器科のイメージを改善し、もっと気軽に相談できて安心していただけるクリニックを目指しております。PSA検査はもちろん、触診や超音波検査で前立腺がんの精査が可能です。尿路結石症や前立腺肥大症などにおいて手術が必要な場合は、連携する総合病院(行徳総合病院、虎ノ門病院など)での手術治療を行い、術後は当院でのフォローアップも可能です。

50歳以上の男性で、まだPSA検査を受けておられない方は、どうぞお気軽に当院を受診してください。人の心に寄り添うことができるクリニックになるよう、スタッフ一同努めてまいります。

前立腺がんの早期発見と適切な治療のため、まずはPSA検査から始めてみませんか。詳しくは皆川クリニックまでお気軽にご相談ください。

著者情報

皆川真吾

医学博士・泌尿器科学会専門医・指導医

泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医

CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター

埼玉県出身。平成13年に秋田大学医学部医学科を卒業後、同大学医学部附属病院、虎ノ門病院、NTT東日本関東病院、聖路加国際病院などで研鑽を積み、令和2年に皆川クリニックを開設。泌尿器科専門医として、日々の診療に携わっています。

Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/

詳しい診療内容や診療時間については、皆川クリニック公式サイトをご覧ください。

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