カテゴリー:
夜間頻尿と年齢の関係~専門医が教える効果的な対策法
夜間頻尿とは?睡眠の質を低下させる厄介な症状
夜間、ぐっすり眠りたいのに何度もトイレに起きなければならない経験はありませんか?
夜間頻尿とは、夜間就寝中に1回以上排尿のために起きる症状を指します。国際禁制学会の定義によれば、「夜間就寝中に1回以上排尿に起きる状態」が夜間頻尿とされています。しかし、実際に治療が必要かどうかは、この症状が日常生活にどれだけ支障をきたしているかがポイントになります。

特に40歳以上になると約70%以上の人が夜間1回以上、排尿のために起きるといわれています。年齢を重ねるほどその頻度は高くなり、80歳以上の男性では2回以上の人が約8割にも達するのです。
夜間頻尿は単なる不便さだけでなく、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。睡眠が断続的に中断されることで、睡眠の質が低下し、日中の疲労感や集中力の低下を引き起こします。
さらに、夜間頻尿のある人はない人に比べて、骨折による入院の割合がほぼ倍増するというデータもあります。夜中に暗い中でトイレに行く際に転倒するリスクが高まるためです。驚くべきことに、死亡率も2倍以上になるという研究結果も報告されています。
年齢と夜間頻尿の関係性~加齢とともに増加する傾向
年齢と夜間頻尿には密接な関係があります。国立長寿医療研究センターの調査によると、年齢が高くなるほど「夜間頻尿がある」方々の割合が高くなり、また尿の回数も高齢の方々ほど多いことが明らかになっています。
具体的な数字を見てみましょう。65~74歳の男性では約40%、75~90歳では55%以上の方が夜間に2回以上トイレに起きています。女性も同様の傾向を示しており、加齢とともに夜間頻尿の頻度が増加しています。(参照:https://muc-kobe.jp/%E5%A4%9C%E9%96%93%E9%A0%BB%E5%B0%BF%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6)

では、なぜ年齢を重ねると夜間頻尿が増えるのでしょうか。その主な理由は、体内の様々な生理的変化にあります。
加齢により抗利尿ホルモンの日内変動が崩れ、夜間の尿量が増加します。若い頃は夜間に抗利尿ホルモンの分泌が増えて尿量が減りますが、高齢になるとこの仕組みが上手く機能しなくなるのです。また、膀胱の容量も加齢とともに減少し、一度に蓄えられる尿の量が少なくなります。
さらに、高齢者では睡眠が浅くなる傾向があり、軽い尿意でも目が覚めやすくなります。若い頃なら気にならない程度の尿意でも、高齢になると目覚めてしまうことが増えるのです。
ただし、若い年齢層でも夜間頻尿に悩む方は少なくありません。特に若い年齢層ほど夜間頻尿の煩わしさと昼間行動への影響が大きいという研究結果もあります。
どうですか?自分の年齢と照らし合わせて考えてみると、なんとなく納得できる部分もあるのではないでしょうか。
夜間頻尿の主な原因とメカニズム
夜間頻尿の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っています。主な原因を理解することで、効果的な対策を講じることができます。
夜間頻尿の原因は大きく分けて以下の3つのタイプに分類できます。
1. 夜間多尿型(尿量が多いタイプ)
夜間に作られる尿の量が多すぎることが原因です。特に男性の夜間頻尿の原因の約7割はこの「夜間多尿」によるものと言われています。1日の総尿量のうち、夜間尿量が33.3%以上になると夜間多尿と診断されます。
夜間多尿の主な原因には以下のようなものがあります:
- 水分摂取のタイミングと量:就寝前の過剰な水分摂取
- 利尿作用のある飲食物:カフェインやアルコールの摂取
- 薬剤の影響:利尿剤やCa拮抗薬などの服用
- 加齢:抗利尿ホルモンの日内変動が崩れ、夜間尿量が増える
- 全身疾患:糖尿病、心不全、腎不全など
- 睡眠時無呼吸症
- 膀胱蓄尿障害型(膀胱に尿をあまりためられないタイプ)
膀胱の容量が小さくなる、または膀胱が過敏になることで、少量の尿でも排尿したくなる状態です。この型の主な原因には以下のようなものがあります:
- 過活動膀胱:膀胱が過敏になり、少量の尿でも強い尿意を感じる
- 前立腺肥大症:男性特有の疾患で、肥大した前立腺が膀胱や尿道を圧迫する
- 膀胱炎:炎症による刺激で膀胱が過敏になる
- 残尿:排尿後も膀胱内に尿が残り、機能的な膀胱容量が減少する
3. 睡眠障害型
睡眠の質が低下することで、軽い尿意でも目が覚めてしまう状態です。本来なら眠りが深ければ気にならない程度の尿意でも、睡眠が浅いと目覚めてしまいます。
睡眠障害型の主な原因には以下のようなものがあります:
- 睡眠時無呼吸症候群:無呼吸による低酸素状態で交感神経が優位になり眠りが浅くなることや、心臓への負荷により夜間尿量が増加する
- 不眠症:眠りが浅くなることで、軽い尿意でも目覚めてしまう
- 就寝時刻の問題:最適な就寝時刻より早く寝ることで睡眠の質が低下する
- ストレス:精神的な緊張が睡眠の質を低下させる
多くの場合、これらの要因が複合的に関わっているため、総合的なアプローチが必要になります。
夜間頻尿が生活に与える影響と健康リスク
夜間頻尿は単なる不便さだけでなく、生活の質や健康に深刻な影響を及ぼします。
まず最も直接的な影響は、睡眠の質の低下です。特に重要なのは、就寝から最初の排尿までの時間です。睡眠には約90分周期のサイクルがあり、最初の3時間が最も深い良質な睡眠が得られる時間帯です。この時間帯に排尿で起きてしまうと、睡眠の質が大きく損なわれます。
夜間頻尿がもたらす健康リスクは想像以上に深刻です。
- 転倒・骨折リスクの増加:夜間に暗い中でトイレに行く際の転倒リスクが高まります。データによれば、夜間頻尿のある人はない人に比べて骨折による入院の割合がほぼ倍増します。
- 死亡率の上昇:驚くべきことに、夜間頻尿は死亡率も2倍以上に高めるという研究結果があります。
- 日中のパフォーマンス低下:睡眠不足による日中の眠気や集中力低下、疲労感は、仕事や日常生活に支障をきたします。
- うつ病リスクの増加:慢性的な睡眠不足はうつ病のリスクを高めます。
- 要介護リスクの上昇:長期的には要介護となる率も高まります。
特に注目すべきは、夜間頻尿と睡眠不足の相互関係です。筑波大学の研究によると、夜間頻尿は男女とも睡眠不足発症に関連していることが明らかになっています。一方で、睡眠不足は女性と50歳未満の方においては夜間頻尿の発症と関連していました。
このように、夜間頻尿と睡眠の質は密接に関連しており、悪循環に陥りやすい関係にあります。
あなたは夜間の睡眠が十分に取れていますか?もし夜間頻尿で睡眠が妨げられているなら、その影響は想像以上に大きいかもしれません。
年齢別の効果的な夜間頻尿対策
夜間頻尿の対策は年齢によって少し異なります。それぞれの年代に合わせた効果的な対策を見ていきましょう。
40~50代の方への対策
この年代では生活習慣の改善が特に効果的です。
- 水分摂取の管理:就寝3時間前からの水分摂取を控えめにしましょう。ただし、日中の水分摂取は十分に行うことが大切です。
- カフェイン・アルコールの制限:特に夕方以降のカフェイン摂取や就寝前のアルコール摂取は控えましょう。
- 骨盤底筋トレーニング:膀胱の機能を支える骨盤底筋を鍛えることで、膀胱容量の改善が期待できます。
- スクワット:下半身全体の筋肉を鍛えることで、骨盤底筋も含めた筋力強化が可能です。
この年代では、まだ身体機能の回復力が比較的高いため、生活習慣の改善による効果が期待できます。
60~70代の方への対策
この年代では生活習慣の改善に加え、より積極的なアプローチが有効です。

- 青竹踏み:信州大学医学部の研究によると、1回2分の青竹踏みを毎日2回、1カ月続けることで、排尿回数の減少効果が確認されています。膀胱容量の増加や血流改善に効果があるとされています。
- 就寝環境の整備:寝る前の室温を上げると夜中にトイレに起きる回数が減ることが研究で明らかになっています。
- 丹田温め:へそから指3本ほど下の丹田を小型の湯たんぽやカイロで温めることで、膀胱の収縮性を改善する効果が期待できます。
- 定期的な医療相談:この年代では前立腺肥大症(男性)や過活動膀胱などの疾患が増えるため、定期的な医師の診察を受けることをお勧めします。
特に青竹踏みは、血行促進や自律神経の調整、精神的ストレスのリフレッシュなどの効果により、尿トラブルだけでなく冷えや便秘の改善にも効果があるとされており、総合的な健康増進に役立ちます。
80代以上の方への対策
この年代では安全面に配慮した対策が重要です。
- 就寝環境の安全確保:夜間のトイレ動線に足元灯を設置するなど、転倒防止策を講じましょう。
- ポータブルトイレの活用:必要に応じてベッドサイドにポータブルトイレを設置することで、夜間の移動リスクを減らせます。
- 医療的アプローチ:医師と相談の上、薬物療法や専門的な治療を検討することも重要です。
- 介護サービスの活用:必要に応じて夜間の見守りサービスなどを利用することも検討しましょう。
この年代では特に、夜間頻尿による転倒リスクを減らすことが重要です。安全面に配慮した環境整備を優先しましょう。
専門医が勧める日常生活での対策法
夜間頻尿の改善には、日常生活での工夫が非常に重要です。泌尿器科専門医として多くの患者さんを診てきた経験から、特に効果的な対策をご紹介します。
水分摂取の工夫
水分摂取の量だけでなく、タイミングが重要です。
- 日中の水分摂取:日中はしっかりと水分を摂り、体内の水分バランスを整えましょう。
- 就寝前の制限:就寝3時間前からは水分摂取を控えめにします。特に就寝直前の大量の水分摂取は避けましょう。
- 利尿作用のある飲み物に注意:カフェイン(コーヒー、緑茶、紅茶など)やアルコールには利尿作用があります。特に夕方以降は控えめにしましょう。
水分制限は脱水症状につながる可能性もあるため、日中はしっかりと水分を摂り、夕方以降に控えめにするというバランスが大切です。一般に、寝る前に水分を摂取すると血液サラサラ効果で脳梗塞や心筋梗塞予防などと言われますが、医学的根拠はありません。多くの人は飲み過ぎてしまい、頻尿を来しています。脱水にならないことは大切ですので、喉が渇いていたら飲むことと、1回に飲む量を少なめにするなどの対策が大切です。
筋力トレーニング
膀胱機能を支える筋肉を鍛えることも効果的です。
- 骨盤底筋体操:肛門と膣(女性の場合)を締める運動を行います。これにより尿道周りの筋肉も鍛えられます。1回10秒キープ、10回を目安に行い,
- これを5セット行いましょう。
- スクワット:下半身全体の筋力強化に効果的です。膝が痛い方は浅めのスクワットから始めましょう。
- 青竹踏み:1回2分、1日2回の青竹踏みで排尿回数の減少効果が期待できます。足裏の刺激が神経を介して膀胱などの臓器を活性化させると考えられています。
これらのトレーニングは継続が大切です。無理のない範囲で毎日続けることを心がけましょう。
温活と睡眠環境の整備
体を温め、良質な睡眠を確保することも重要です。
- 入浴タイミング:就寝2~3時間前の入浴が効果的です。湯船にしっかりつかり、体を温めましょう。
- 就寝前の室温管理:就寝前の室温を適切に保つことで、夜間頻尿の回数が減少することが研究で示されています。冷やさないことが大切です。
- 丹田温め:へそから指3本ほど下の丹田を温めることで、膀胱機能の改善が期待できます。
- 睡眠姿勢:仰向けで寝ると下肢の浮腫みが取れやすく、夜間の尿量が増える可能性があります。横向きの姿勢も試してみましょう。
体を冷やさないことが夜間頻尿対策の基本です。特に下半身と足先の冷えに注意しましょう。
医療機関での治療法と受診のタイミング
生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合、医療機関での治療を検討する必要があります。どのような治療法があり、いつ受診すべきかを解説します。
主な治療法
夜間頻尿の原因によって、適切な治療法が異なります。
- 薬物療法:
- β3作動薬:過活動膀胱による頻尿に効果があります。
- デスモプレシン:夜間多尿に対して効果が期待できます。
- α1ブロッカー:前立腺肥大症による排尿障害の改善に用いられます。
- 前立腺肥大症の治療:男性の場合、前立腺肥大症が原因となっていることが多いため、その治療が効果的です。レーザー治療や水蒸気による治療など、体への負担が少ない新しい治療法も確立しています。
- ボトックス膀胱壁内注入療法:薬の内服で治療が困難な難治性の過活動膀胱に対して効果的です。当院でも日帰りでの手術が可能で、1回の投与で約6~9ヶ月の治療効果が持続します。
- スターフォーマーPro:磁気の力で筋肉や神経を刺激し、骨盤底筋や体幹の筋肉を鍛える治療法です。座っているだけで30分で5万回の筋肉運動が可能になります。尿もれや夜間頻尿、過活動膀胱症状、その他腰痛や骨盤痛、EDに対しても効果があります。薬物療法に頼らず、機能的な回復を期待したい方へお勧めです。
受診のタイミング
以下のような場合は、泌尿器科の受診をお勧めします。
- 夜間に2回以上トイレに起きる状態が続いている
- 夜間頻尿によって日中の活動に支障が出ている
- 突然、頻尿の症状が悪化した
- 排尿時の痛みや血尿がある
- 残尿感(排尿後も尿が残っている感覚)がある
- 生活習慣の改善を試みても症状が改善しない
特に40歳以上の男性で夜間頻尿がある場合は、睡眠時無呼吸症や前立腺肥大症の可能性もあるため、一度泌尿器科を受診することをお勧めします。
診察・検査の流れ
泌尿器科を受診すると、通常以下のような流れで診察・検査が行われます。
- 問診:症状の詳細、生活習慣、既往歴、服薬状況などについて詳しくお聞きします。
- 排尿日誌:必要に応じて数日間の排尿量と回数、水分摂取量などを記録していただくことがあります。
- 尿検査:尿の状態を調べ、炎症や感染がないかを確認します。
- 超音波検査:腎臓や膀胱、前立腺(男性の場合)の状態を確認します。
- 残尿測定:排尿後に膀胱に残っている尿の量を測定します。
- 尿流測定:尿の勢いや量、排尿時間を測定し、排尿機能を評価します。
これらの検査結果に基づいて、最適な治療法を提案します。早期の受診と適切な治療により、夜間頻尿の症状は大幅に改善することが可能です。
まとめ~年齢に応じた夜間頻尿対策で睡眠の質を向上させよう
夜間頻尿は年齢とともに増加する症状ですが、適切な対策を講じることで大幅に改善することができます。年齢に応じた効果的なアプローチが重要です。
40~50代では生活習慣の改善、特に水分摂取の管理や骨盤底筋トレーニングが効果的です。60~70代では青竹踏みや温活など、より積極的なアプローチが有効です。80代以上では安全面に配慮した環境整備が特に重要になります。
日常生活での対策としては、水分摂取の工夫、筋力トレーニング、温活と睡眠環境の整備が基本となります。これらの対策を継続的に実践することで、多くの方が症状の改善を実感されています。
しかし、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合は、泌尿器科専門医への相談をお勧めします。適切な検査と診断に基づいた治療により、夜間頻尿の症状は大幅に改善することが可能です。
夜間頻尿は「年齢だから仕方ない」と諦めるのではなく、積極的に対策を講じることが大切です。良質な睡眠は健康の基本です。夜間頻尿を改善し、ぐっすりと眠れる夜を取り戻しましょう。
夜間頻尿でお悩みの方は、ぜひ一度、専門医にご相談ください。当院では患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案しています。
詳しい診療内容や予約方法については、皆川クリニックのウェブサイトをご覧ください。
著者情報
皆川真吾
主な資格
医学博士、泌尿器科学会専門医・指導医、泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術認定医、CVP(接触式前立腺レーザー蒸散術)プロクター
所属学会
日本泌尿器科学会、日本泌尿器内視鏡学会、日本抗加齢医学会、GSM研究会、日本メンズヘルス医学会
Best Doctors in Japan 2024-2025にも選出。ベストドクターズ公式サイト:https://bestdoctors.com/japan/

参考文献
国立長寿医療研究センター「夜間のトイレ何回行きますか【夜間頻尿】」
筑波大学 根来宏光氏「夜間頻尿と睡眠不足の相互の関連」Scientific Reports誌2023年6月11日号
信州大学医学部泌尿器科 皆川倫範講師「青竹踏みによる頻尿の改善効果」
